高齢化社会などの社会状況の変化によって、介護福祉士の果たす役割がより重要視されています。社会人として働いている方たちの中からも、介護福祉士へ転職しようという動きが目立っています。
今回は介護現場が未経験の社会人が介護福祉士になる方法や、介護福祉士を目指す上で知っておきたい国家試験の概要、合格率、資格取得までのルートについてご紹介します。
介護福祉士を目指すときに役立つ情報
これから介護福祉士を目指そうとする社会人のために、あらかじめ押さえておくべき事柄や役立つ情報について解説します。
介護福祉士は国家資格です
介護福祉士は国家資格です。社会人が介護福祉士になるには国家試験に合格しなければなりません。
国家試験の概要
国家試験は毎年1回行われ、筆記試験と実技試験があります。筆記試験は1月、実技試験は3月で、全国各地で実施されます。
参考として、令和4年に行われた国家試験の概要をご紹介します。
試験の概要 |
試験区分 |
期日・場所・試験の内容など |
試験期日 |
筆記試験 |
令和4年1月30日(日) |
実技試験 |
令和4年3月6日(日) |
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試験地 |
筆記試験 |
全国35か所 |
実技試験 |
東京都、大阪府 |
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試験科目 |
筆記試験 |
介護、こころとからだのしくみ、人間と社会、医療的ケアの4つの領域と総合問題から出題 |
実技試験 |
介護等に関する専門的技能 |
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合格者発表 |
日付・場所 |
令和4年3月25日(金)午後 公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページ |
受験手続 |
郵送 |
令和3年8月18日(水)~9月17日(金) |
インターネット |
令和3年8月18日(水)~9月17日(金) |
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費用 |
受験手数料 |
18,380円 |
実施年度によって試験日などは変更になるので、事前に厚生労働省のホームページで確認してください。
国家試験の合格率
介護福祉士国家試験の合格率はその年によって違いますが、平均して70%ぐらいですので他の国家試験より合格率は高いといえます。
合格率が高い理由は、実務経験3年以上という受験資格だといわれています。実際に介護の仕事を経験しており、現場のことをよく知っている人が受験するので合格率が高いのです。
平成20年前後の合格率は50%前後でしたが、近年は70%をキープしています。参考までに直近5年間の受験者数、合格者数、合格率をお伝えします。
実施年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
第29回(平成29年) | 76,323 | 55,031 | 72.1 |
第30回(平成30年) | 92,654 | 65,574 | 70.8 |
第31回(平成31年) | 94,610 | 69,736 | 73.7 |
第32回(令和2年) | 84,032 | 58,745 | 69.9 |
第33回(令和3年) | 84,483 | 59,975 | 71.0 |
介護福祉士の仕事とは?
介護に関わる仕事はたくさんあります。その中でも国家資格を必要とする唯一の専門職が介護福祉士です。
介護福祉士の仕事は、高齢や障がいで日常生活の支援が必要な人へのサポートです。排せつ、入浴の介助、食事、着替え、調理、洗濯、掃除などの支援や、介護者を抱える家族への介護方法の助言などを行います。
また介護だけでなく高齢者や障がい者の健康管理も大事な仕事なので、さまざまな知識や技術が必要とされます。
介護福祉士が活躍する3つの職場
介護福祉士がおもに活躍する職場を3つご紹介します。実際に働く現場を知ることで、介護福祉士の果たす役割が理解できます。
自宅訪問でのサポート
高齢者や障がい者の自宅を訪問して、介護をします。
自宅訪問の種類 | 介護の内容 |
ホームヘルプサービス (高齢者・障がい者) | 介護を必要とする人の自宅で、入浴や食事や排せつなどの介護、料理や洗濯や掃除などをサポート |
訪問入浴介護 (高齢者) | 自宅での入浴ができない高齢者のために、車で浴槽を運ぶなどの入浴サポート |
高齢者や障害者が通う施設でのサポート
施設に通っている高齢者や障がい者のために施設でサポートをします。
施設の種類 | 介護の内容 |
デイサービスセンター (高齢者) | デイサービスセンターに通ってくる高齢者に、リハビリやレクリエーションや入浴などのサポート |
就労継続支援施設 (障がい者) | 障がい者の就労を支援する施設での訓練をサポート |
高齢者や障がい者が入居している施設でのサポート
高齢者や障がい者の中には施設で暮らしている人もいます。そのような施設でサポートをします。
施設の種類 | 介護の内容 |
特別養護老人ホーム (高齢者) | 入浴、排せつ、食事などの日常生活、およびリハビリや健康管理などのサポート |
グループホーム (高齢者) | 認知症の人が共同生活している施設で、入浴、排せつ、食事、機能訓練などのサポート |
ケアハウス (高齢者) | 自立して生活するのが難しい高齢者の介護施設で、日常生活のサポート |
障害者支援施設 (障がい者) | 障がい者の施設入所支援や自立訓練を行う施設で、入浴や食事など日常生活のサポート |
社会人が介護福祉士を目指すルート
国家試験に合格しないと介護福祉士になれません。国家試験は誰でも受験できるわけではなく、一定の受験資格をクリアする必要があります。社会人が介護福祉士の資格を取得できる3つのルートについて説明します。
介護福祉士の資格取得ができる3つのルート
介護福祉士の資格を取得するには、養成施設ルート、実務経験ルート、福祉系高校ルートの3つがあります。それぞれのルートの流れを、表を交えて説明します。
養成施設ルート
スタート |
学習/実習1 |
学習/実習2 |
ゴール |
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高校卒業 |
→ |
保育士養成施設等 |
→ |
介護福祉士養成施設(1年以上) |
→ |
国家試験 |
→ |
社会福祉士養成施設等 |
→ |
→ |
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→ |
大学(社会福祉の科目履修) |
→ |
→ |
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→ |
介護福祉士養成施設(2年以上) |
→ |
高校を卒業した人は介護福祉士養成施設で2年学べば、国家試験を受験できます。表にあるとおり、それ以外のコースに進んだ人は介護福祉士養成施設で1年学べば受験資格が得られます。
介護福祉士養成施設で学べるので、介護の現場が未経験な社会人に向いているルートです。また実技試験が免除になるので、筆記試験に集中して受験対策ができます。
実務経験ルート
スタート |
学習/実習 |
ゴール |
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実務経験3年 |
→ |
介護職員基礎研修及び喀痰吸引等研修 |
→ |
国家試験 |
→ |
実務者研修(6か月以上) |
実際に介護の現場で3年以上働いている社会人におすすめのルートです。実務者研修を6か月以上受けるだけで国家試験を受験できます。
養成施設などの学校に通わずにすむため、働きながら介護福祉士を目指す社会人に向いています。実務経験があるので実技試験は免除されます。
福祉系高校ルート
スタート |
学習/実習 |
ゴール |
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平成21年度以降に入学 |
→ |
(学習・実習なしで国家試験へ) |
→ |
国家試験 |
平成20年度以前に入学 |
→ |
(学習・実習なしで国家試験へ) |
||
→ |
介護技術講習、介護課程、介護課程Ⅲのいずれか修了または履修 |
福祉系高校を卒業した人のためのルートで、平成21年度以降に入学した人は高校を卒業後に国家試験を受験できます。このルートも実技試験は免除されます。
スタート |
学習/実習1 |
学習/実習2 |
ゴール |
|||
特例高校 |
→ |
実務経験 9か月 |
→ |
(学習・実習なしで国家試験へ) |
→ |
国家試験 |
→ |
介護技術講習、介護課程、介護課程Ⅲのいずれか修了または履修 |
特例高校とは介護福祉士養成課程の基準を満たし、文部科学大臣および厚生労働大臣の指定学校です。
ライフスタイルに合わせてルートを選ぼう
社会人が介護福祉士を目指すとき、現在のライフスタイルに合っているかどうかを見極めることが大事です。介護の現場で働いている場合は、実務経験ルート。介護現場が未経験な社会人なら養成施設ルートが適しています。
実際に介護の現場経験がある社会人と違って、未経験な社会人はルート選びに迷うことでしょう。そのようなときは、次の2つの方法から選んでみてください。
介護の仕事に転職する
現在の仕事から介護の仕事に転職して、3年間実務経験を積みます。そうすることによって実務経験ルートに進むことができます。
実際に社会人から介護福祉士になっている人の多くが、実務経験ルートを狙って介護職に転職しています。この方法なら、介護の仕事内容を熟知した上で資格を目指せます。転職する勇気がないという人は、「介護職員初任者研修」を受講するという方法もあります。
介護福祉士養成施設へ通う
未経験の社会人がストレートに資格を取りたい場合、介護福祉士養成施設に通うという方法があります。介護福祉士養成施設へ通えば最短で受験資格が取れますが、学費が必要です。早い段階から介護福祉士になろうと考えている社会人は、学費の準備をしておくのがよいでしょう。
また、介護福祉士養成施設を受験するための準備も必要です。受験する養成施設の過去問などの問題集が役立ちます。
社会人から介護福祉士にキャリアアップしよう!
介護福祉士についての役立つ情報や、社会人から介護福祉士になるルートについて説明してきました。介護福祉士という仕事は今後ますます重要になり、国や自治体も介護人材の養成を支援しています。
例えば介護福祉士養成施設等の学生について、在学中の学費や入学準備金、就職準備金などを奨学金として貸与しており、5年間仕事に従事すれば返還免除となります。
未経験の社会人でも、ご紹介したルートで介護福祉士の資格が取得できます。社会に必要とされ、誇りを持って仕事ができる介護福祉士にキャリアアップしてみませんか。