医療事務は比較的未経験の方に対してもハードルが低い職種です。年齢に関係なく長く安定して働きやすいことから、特に女性の間で人気の職業の1つです。
ただ、未経験でも良いといっても、ある程度のスキルは身につけておいて損はありません。資格取得をすると給料アップにも繋がります。
そこで今回は、医療事務のスキルを得る方法の1つとして、職業訓練の医療事務コースを通じて学べる内容や申し込みの際の注意点などについて解説します。
医療事務とはどのような職種か
医療事務とは、病院や診療所など医療機関で働く事務職のことです。事務というと机に向かって書類の作成をしたり、パソコンで情報を入力したりするイメージがあるかもしれません。
それだけではなく、医療事務は患者さんと接する窓口の役割などを担っていて、担当業務は多岐にわたっています。
医療事務の仕事内容
医療事務の作業は大きく4つに分かれており、概要は以下のとおりです。
業務名称 | 業務の主な内容 |
受付業務 | 窓口で患者さんに対応する、いわば「病院の顔」というべき業務。 患者さんから診察券や保険証を受け取る。 |
会計業務 | 患者さんが受診した後、医療費の明細書を作成。 患者さんからお金を受け取り、明細書や処方箋などを渡す。 |
クラーク業務 | 大規模病院のナースステーションで勤務。 入退院に必要な書類のやり取りや入院費用に関する説明や施設の利用案内を行う。 |
レセプト業務 | 健康保険組合に提出する診療報酬明細書(レセプト)の確認などを行う。月ごとにまとめて行うため、提出の締切前が繁忙期となる。 |
雇用形態は正社員や派遣社員、契約社員、パート・アルバイトなどまちまちですが、未経験の場合は、まずはパートやアルバイトから始めることになります。
医療事務に資格は必要?
同じ病院に勤める医師や看護師とは異なり、医療事務に就くために必要な資格はありません。「医療事務技能審査試験」「医療事務認定実務者」「診療報酬請求事務能力認定試験」など、医療事務にまつわる資格はいくつかありますが、これらの資格がなくても仕事はできます。
ただ、資格取得のための勉強を通じて医療事務に関する知識が得られますし、自分の知識の棚卸しにも役立ちます。また、応募や面接の際には資格を持っていることで医療事務に対する意欲をアピールできます。
中には給料とは別に資格手当を支給しているケースもあり、例えばある病院では以下のように規定されています。そのため、収入アップと直結しています。
資格名称 | 資格手当月額 |
医師事務作業補助者実務能力者認定試験 | 1,000~2,000円 |
医科2級医療事務実務能力認定試験 | 1,000~2,000円 |
診療報酬請求事務能力認定試験 | 1,000~5,000円 |
医療事務の職業訓練
職業訓練によって医療事務のスキルを磨くには、厚生労働大臣に指定された訓練機関において決められたコースを受講する必要があります。ここでは職業訓練を受けるまでに必要な手順についてご説明します。
職業訓練の申し込み方
まずはハローワークで求職登録をした後、職業相談員からカウンセリングを受けます。その後、受講申し込みを行いますが、厚生労働省のホームページに掲載されている「教育訓練給付制度厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」で、どこの訓練機関でいつ実施されているのかが調べられます。
カリキュラムの例
実際の職業訓練ではどのような内容が学べるのでしょうか。ひと口に医療事務向けの講座と言っても通学と通信教育の両方がありますし、学べる内容はまちまちですので、学習期間もバラバラです。
下記に一例として、受講期間が2か月、1日の訓練時間が6時間という職業訓練のカリキュラムをあげてみました。
科目 | 時間数 | |
学科 | オリエンテーション | 2時間 |
職務経歴書・履歴書の作成指導、面接時の注意事項など | 12時間 | |
医療保険制度の基礎知識 | 6時間 | |
医療点数算定(診療報酬)の基礎知識 | 42時間 | |
調剤報酬点数の基礎 | 9時間 | |
実技 | 医療実務症例、レセプトの作成・点検 | 27時間 |
調剤レセプトの作成・点検 | 12時間 | |
医療事務受験対策問題 | 12時間 | |
合計 | 122時間 |
修了時には調剤報酬請求技能認定が取得でき、医療事務技能審査試験を受けるためのスキルが得られます。
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面接での注意点
また、上記医療事務の職業訓練におけるカリキュラムの例では、自己負担額が必須分はテキスト代の11,000円のみとなっており、任意分の資格受験料や保険料などを合わせても50,000円に満たないため、安価で利用できるのはうれしいポイントです。
面接で確認されること
職業訓練を申し込むためには、事前にハローワークで面接を受ける必要があります。ここでは、面接での注意点についてご説明します。医療事務に限らず最も確認を受ける点は、申し込む訓練を元にして本当に就職しようという気構えがあるのかということです。そのため、就職に向けた具体的な計画が立てられているのかどうかが問われます。
医療事務の場合は、訓練修了後にどのような医療機関で働きたいのか、実際にどの地域で就職するのか、いつ頃から就職活動をしようと考えているのかといった内容が問われます。そのため、あらかじめ具体的な計画を立てておく必要があります。
志望動機を固めておく
医療事務の職業訓練を受ける際の面接では、志望動機についても確認されます。職業訓練を利用した講座受講は就業中の方だけではなく、失業中で受講する方もいます。多くの方が職業訓練を希望されるため、ハローワーク側からすると実際にきちんと講座を受講して修了できるのか、最終的に就職につながるのかを確認しなければなりません。そのため、志望動機によって受講の可否が判定される可能性があるのです。
受講を希望する側からすると、面接相手に対して志望動機を納得させることが必要です。志望動機を説明する際は、「説明内容に整合性が保たれていて、正直に話すこと」と「相手にわかりやすく伝えること」が大事です。
以下に説明の材料に関する例を挙げます。
- 転職の場合、前職を辞めた理由
- 医療事務という仕事に興味を持った理由(具体的なエピソードがあれば、なお良い)
説明する内容は、就職面接と基本的には変わりません。また、前職を辞めた理由について、自分の病気や労働環境が良くなかったといったネガティブな内容を話しても構いません。あくまでも正直に話しましょう。
訓練終了後に追跡調査も
また、訓練修了後に就職活動の状況についてヒアリングを受けることがあります。活動内容については、具体的に説明しましょう。実際にどの医療機関でいつ就職面接を受けたのか、採用結果はどうだったのかを回答します。
また、就職面接をまだ受けていない場合は、その理由を説明する必要があります。ただ単に忙しかったというだけでは、就職への意欲を疑われてしまいます。受けようと思っていた病院が募集をしていなかったなど、理由を整理しておきましょう。
医療事務のスキル取得に職業訓練を活用しよう
職業訓練を受けるには、面接を受けたりその後の就職状況を報告したりと、さまざまな対応をしなければなりません。とはいえ、少ない自己負担で十分な訓練が受けられるのは大きな魅力です。今回ご説明した内容を参考に、十分な準備を行なった上で面接に臨んでください。
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