教員として働くためには、教員免許を取得し、自治体や学校法人などに教員として採用される流れが一般的です。「社会人になってしまった今、教員の道を志すのは無理があるかな…」と諦めかけた皆さん、ご安心ください。社会人から教員を目指す方法は、5つもあります。
今回は、社会人として働きながらも教員免許を取得できる方法5つについて解説します。きっとあなたにあった教員へのルートが見つかるはずです。
社会人から教員になるには?
社会人として働き始めてからでも教員を目指すことは可能です。教員になるためには、教員免許の取得が必要になるため、すでに教員免許を取得している場合は、公立や私立学校の教員採用試験に合格することで教員になることができます。
教員免許を取得していない場合は、教員免許の取得を目指すことが教員になるための第一歩です。社会人として働きながらも、教員免許を取得する方法にはさまざまな方法があります。また、免許を取得せずに教員になる方法もありますので、自分の状況に合った方法を選びましょう。
社会人が教員免許を取得するための方法は5つ
教員免許を取得する方法は、大学などで教育課程を修了するだけではありません。社会人が教員免許を取得するためには5つの方法があります。
通信制大学
通信制大学は、自宅学習が中心となるため、大学に通うのが難しい社会人にとって、働きながら教員免許の取得を目指しやすい方法の一つです。仕事の後や休日など、自分のペースで学習を進めることができます。
通信制大学では、カリキュラムに従い、取得したい教員免許に必要な単位を履修し、大学が定める卒業要件を満たすことで卒業とともに教員免許を取得できます。自宅学習が中心ではありますが、カリキュラムには座学以外にも教育実習や介護体験などが含まれているため、社会人の場合は仕事を休む必要が出てくることも考慮しておきましょう。
通信制大学にかかる費用は?
通信制大学は、普通の大学よりも学費を安く抑えられる傾向があります。金額は大学によりさまざまですが、一般的な相場として免許取得までには30万円ほどとされています。費用に差があっても、取得できる教員免許は同じなので、経済的に余裕がない場合は、なるべく費用がかからない通信制大学を選ぶのも良いでしょう。
また、授業料は年額で加算されるため、仕事との両立がうまくいかず、単位取得に時間がかかった場合などは、費用が高くなるケースがあることも考慮しておくことが大切です。
教育資格認定試験
教育資格認定試験とは、大学などの教育課程を修了していない場合でも、教員として必要な資質や能力を持つと認められた場合、教員として働く機会を提供するために実施される試験のことです。現在試験が実施されているのは次の3種類になります。
- 幼稚園教員資格認定試験(幼稚園教諭二種免許状)
- 小学校教員資格認定試験(小学校教諭二種免許状)
- 特別支援学校教員資格認定試験(特別支援学校自立活動教諭一種免許状)
認定試験に合格後は、合格証書を元にお住まいの都道府県の教育委員会に申請することで、普通免許状を取得できます。
受験資格
教員資格認定試験の受験資格は学校種別に定められており、次の通りです。
学校種別 | 受験資格 |
幼稚園教員資格認定試験 | 高等学校を卒業者、その他大学や短期大学に入学する資格を有する20歳以上で、保育士(国家戦略特別区域限定保育士を含む)となる資格を有した後、3年以上勤務した者(勤務時間の合計が 4,320 時間以上) |
小学校教員資格認定試験 | 高等学校を卒業した者、またはその他大学や短期大学に入学する資格を有する20歳以上の者 |
特別支援学校教員資格認定試験 | 試験科目等の一部免除者のみ実施 |
試験内容
教員資格認定試験の試験内容は、学校種別ごとに次の通りとなっています。小学校教員と特別支援学校の資格認定試験は、一次試験と二次試験に分けて行われます。
学校種別 | 試験科目 | 試験内容 | 試験方法 | |
幼稚園教員資格認定試験 | 教科および教職に関する科目(I) | 教育原理や教育制度など | マークシート式 | |
教科および教職に関する科目(II) | 保育内容の指導法や幼児理解など | マークシート式 | ||
幼稚園教育の実践に関する科目 | 指導案の作成 | 論述式 | ||
小学校教員資格認定試験 | 第一次試験 | 教科および教職に関する科目(I) | 教育の基礎的理解や道徳・総合的な学習の時間など | マークシート式 |
教科および教職に関する科目(II) | 小学校の10教科の中から6科目を選び、その専門的な事項と指導法 | マークシート式 | ||
教科および教職に関する科目(III) | 小学校の10教科から1科目を選び、その専門的な事項と指導法 | 筆記試験 | ||
教科および教職に関する科目(IV) | 小学校教員として必要な能力全般 | 筆記試験 | ||
第二次試験 | ー | 教職への理解及び意欲,小学校教員として必要な 実践的指導力に関する事項 | 指導案作成、模擬授業、グループ討論または個別面接及び課題論文など | |
特別支援学校教員資格認定試験 | 第一次試験 | 教職に関する専門的事項に関する科目 | 教職に関する知識 | マークシート式 |
自立活動に関する科目(I) | 特別支援教育に関する知識 | マークシート式 | ||
第二次試験 | 自立活動に関する科目(II)(III) | 視覚障害・言語障害それぞれの専門的事項 | Ⅱは筆記、Ⅲは実技形式 | |
口述試験 | 自立活動担当教員として必要な能力全般 | 口述試験 |
特別免許状制度
特別免許状制度は、教員免許状を持っていない人でも、民間企業での経験や、スポーツや文化での活動実績、博士課程での研究など、優れた専門性を持つ人が教員として働くことで、学校教育の多様化や活性化を促進する目的で導入された制度です。
都道府県教育委員会が行う教育職員検定に合格することで授与され、小中高の全教科および特別支援学校における自立教科を担当できます。教育職員検定を受けるためには、市区町村教育委員会や学校法人など、学校の校長に推薦状を発行してもらう必要があるため、まずは、採用されたい学校に、自分のスキルや経験などを踏まえて相談してみましょう。
臨時免許状を取得する
臨時免許状は、普通免許状を取得している人を採用できない場合に限り、例外的に授与される免許状のことです。都道府県教育委員会が行う教育職員検定に合格すると授与されます。発行された都道府県でのみ効力を有するのが特徴です。
臨時免許状を取得すると、助教諭や養護助教諭の非正規教員として働くことができますが、有効期限が3年間となっているため、長期間教員として働くためには再度臨時免許状を取得するか、他の方法で教員免許状を取得する必要があります。
大学などに入学する
一般的に教員免許を取得する方法としてメジャーなのが、普通の大学や短期大学などに通って教員免許を取得する方法です。免許取得まで2~4年はかかることや、学校に通って学習をする必要があるため、社会人として働きながら通うのは難しいでしょう。
高校卒業後に社会人として働いている場合は、大学か短期大学に入学し、必要な単位を取得して卒業する必要があります。
すでに大学を卒業している場合は、全課程を学習し直すのではなく、次のような選択肢があるため確認しておきましょう。
- 大学に再度入学し教員になるための課程を卒業する
- 有効単位がある場合は「科目等履修生」として必要な科目のみ履修する
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教員として働くための3つの方法
教員免許状を取得できても、持っているだけでは教員として働くことはできません。社会人から教員として働くためには、次の3つの方法があります。
- 各都道府県や政令指定都市の教育委員会が行う教員採用試験に合格する
- 私立学校の採用試験に合格する
- 自治体で講師として登録する
ここではそれぞれの方法について解説します。
教員採用試験に合格する
教員採用試験は、各都道府県や政令指定都市の教育委員会が実施するもので、公立学校で教師として働くためには欠かせません。多くの場合、4~5月に受験の申込みが行われ、一次試験が7月、二次試験が8月に実施されます。教員採用試験は難関といわれることも多く、倍率は次の通りです。
学校種別 | 倍率 |
小学校 | 2.7倍 |
中学校 | 5.0倍 |
高等学校 | 6.1倍 |
高等学校が最も倍率が高い傾向にありました。また、科目によっても採用数が異なるため、社会科や副教科、音楽や美術などの実技教科はより合格難易度が高くなる傾向があります。
年齢制限
教員採用試験は、自治体により異なりますが年齢制限が設けられている場合も少なくありません。49歳となっている自治体が多く、最も年齢制限が低いのは、39歳となっている東京都と奈良県です。
年齢制限が設けられている場合でも、教職経験者や英語や理科など特定領域の有資格者や指導経験者については、条件が緩和されるケースもあります。例として東京都は、基本年齢制限が39歳に対し、教職経験者などは59歳と大幅に条件が緩和されているのが特徴です。
教員採用試験の試験内容
教職員採用試験は、一般的に次の4つの試験が実施されます。
試験の種類 | 試験内容 |
筆記試験 | 教職教養、一般教養、専門教養、論作文 |
面接試験 | 個人または集団、模擬授業など |
実技試験 | 体育、音楽、英語 |
適性検査 | 教員の資質として必要な特性について検査 |
自治体により試験内容や形式などが異なりますが、一次試験と二次試験に分けて実施されるケースが多いです。受験する自治体のホームページなどで試験情報を確認し、試験内容の振分けや、それぞれの試験内容の配点などを確認しておきましょう。
私立学校に応募する
公立高校よりも採用人数が少ない傾向にありますが、私立学校に応募して教員として働くのも選択肢の一つです。私立学校は、公立学校とは異なり、学校ごとに採用を行います。そのため、採用基準やスケジュールも学校ごとに異なるため、各学校のホームページなどで募集情報を随時確認しておくことが大切です。
また、東京都など一部自治体では、私学教員適性検査を実施している場合もあります。私学教員適性検査を受けると、受験者の名簿が各私立学校長に配布され、学校側から採用試験の誘いが来る可能性もあるため、お住まいの自治体の実施状況を確認しておきましょう。
自治体で講師として登録する
教員採用試験に合格できなかった場合や、何らかの理由で受験していない場合は、各自治体で講師登録をすることで臨時的任用等教職員(常勤講師)として働くことが可能です。常勤講師は、正規教諭と同じように担任としてクラスを受け持ったり、教科担任になったりします。
実際の仕事内容は正規教員と大きく違いはありませんが、1年間契約となる点で正規教員と大きく異なります。各自治体のホームページなどに講師登録についての情報が掲載されているため、一つの選択肢として確認しておきましょう。
社会人から教員は目指せる
教員として働くためにはさまざまな方法がありますが、教員免許を取得するのが第一歩です。教員免許を取得するためには、通信制大学や普通の大学などで教育課程を履修したり、教育職員検定を受けたりなど、社会人からでも教員を目指すことができます。
自分の知識はもちろん、教員免許取得にかけられる時間や費用を考慮して、教員になるための第一歩を踏み出しましょう。
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