「30代から教師なんて、需要在るかな」と、教員になりたいけれど不安が残る社会人の皆さん、もう心配しないでください。30代から教師を目指す方は、需要しかありません。
今回は、教員採用試験の年齢制限、教員免許状の取得方法を解説します。後半では、30代だからこその教師になる強みを4つ紹介しますので、読み終える頃には、教師への熱意が倍増していることでしょう。
30代から教師を目指しても遅くない!
「30代で教師を目指すのは遅すぎる?」と不安を抱いている人も多いでしょう。しかし、30代といえば一般的に社会人としてのキャリアの前半戦であり、思い切って教師への転職に挑むのに遅いことはありません。
民間企業など公務員以外から教師に採用される人は、公立学校教員採用者の1割前後を占めており、民間からの教員転職も決して珍しくないといえます。さらに、そもそも教員採用試験の受験生は新卒の割合が1~4割ほどであり、何度も試験を受けて合格を目指す受験生がほとんどです。「遅すぎる」「職種が違いすぎる」と諦めず、必要なプロセスを理解して努力すれば、教師になる道は開けるはずです。
教師になるのに年齢制限はある?
教員免許の取得には、年齢制限はありません。自治体が実施する教員採用試験では、自治体ごとに受験可能な年齢の制限が設けられている場合があります。しかし、制限が設けられている場合も多くは40代後半から50代を上限年齢としているため、30代で教員採用試験を受験したり、受験の準備を始めたりするのに支障はないでしょう。
ただし、次の自治体は令和3年度公立学校教員採用選考試験時点で上限年齢を39歳としているため、受験時には注意が必要です。
- 東京都
- 奈良県
30代から教師を目指すスタートラインは教員免許取得
30代から教師になるには、次の2つのステップをクリアする必要があります。
- 教員免許を取得する
- 教諭または講師として採用される
教員免許は、着任する学校の公立・私立を問わず共通のものが必要です。教員免許の種類や特徴、取得方法を、それぞれ具体的に見てみましょう。
教員免許の種類と取得方法
教師になるのに必要な教員免許状には「普通免許状」「特別免許状」「臨時免許状」の3種類があります。それぞれの特徴や取得方法は表のとおりです。
教員免許状の種別 | 有効期限 | 有効地域範囲 | 特徴 | 取得方法 |
普通免許状 | - | 全国 | 教諭、養護教諭、栄養教諭の免許状。専修・一種・二種の3区分に分かれる。区分によって指導できる内容の差異はない。 | 専門学校・短期大学、大学、大学院などでの教員養成課程や教職課程の履修などにより取得資格を得て、教育委員会に申請する。 |
特別免許状 | - | 授与を受けた都道府県 | 教諭の免許状。社会経験を積み、教科に関する専門的な知識・経験や技能などがある人に授与される。 | 任命者または雇用する者の推薦を受け、教育職員検定に合格する。 |
臨時免許状 | 3年 | 授与を受けた都道府県 | 助教諭、養護助教諭の免許状。普通免許状を持つ人を採用できない場合に授与される。 | 教育職員検定に合格する。 |
いずれの教員免許状も持っていない場合は、教員採用試験の受験前にいずれかの免許状を取得しておくか、取得見込みの状態になっている必要があります。
すでに教員免許を持っている場合には、有効期限が切れていなければ改めて免許状を取得する必要はありません。ただし、教員免許更新制の導入期間中に教員免許状が失効した人は、お住まいの自治体の教育委員会などに再授与の手続きを取る必要があります。
働きながら教員免許を取れる「教育職員検定」とは
教育職員検定とは、主に特別免許状を取得するのに必要な資格検定です。専門性や多様な背景をもつ教員を採用するために、大学などの教職課程を経ていない人にも教員免許状取得の門戸を開いたのが、特別免許状と教育職員検定の制度です。
教育職員検定は各自治体の教育委員会が行うもので、次の特別免許状を取得できます。
- 小学校・中学校・高等学校の全教科
- 特別支援学校の自立教科等(理療・理容・自立活動など)
教育職員検定を受けて特別免許状を取得し、採用に至るまでのおおよその流れは以下のとおりです。
- 採用されたい学校を所管する教育委員会(私立学校や大学は各学校)に経験や専門知識などを踏まえて相談する
- 教育委員会、学校法人、学校長などが推薦書を発行する
- 採用予定の教育委員会や学校法人の理事長、校長などから都道府県教育委員会に出願する
- 都道府県教育委員会が教育職員検定を実施する
- 合格すると特別免許状が授与される
- 採用
専門分野の知識・経験があれば、教師としての採用に直結する可能性がある制度のため、教職課程を履修するのと比べて、費用や時間を抑えて教師になれるメリットがあります。
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教師として採用される方法は3つ
教師として採用される主なルートは、次の3つです。
- 教員採用試験に合格して公立学校教諭になる
- 自治体に講師登録をして公立学校講師に採用される
- 学校ごとの採用試験に合格して私立学校教諭・講師になる
それぞれ必要な手続きや対策などが異なるため、どのルートで教師を目指すのか具体的にイメージしながら準備をすることが大切です。以下で、それぞれの方法について詳しく紹介します。
公立学校教諭:教員採用試験に合格する
公立学校の教諭になるには、各都道府県や政令都市の教育委員会が実施する教員採用試験に合格しなければなりません。試験の日程や実施方法は自治体により異なりますが、多くは表のような内容で行われます。
試験の種類 | 日程 | 実施内容 |
一次試験 | 6~7月 | 筆記試験(教養試験) |
二次試験 | 8~9月 | 面接試験 論作文 実技試験 適性検査 |
なお、自治体によっては社会人を対象にした社会人特別選考枠を設けています。筆記試験の代わりに面接や小論文などの人物試験をメインにするなど、多忙な社会人でも受験しやすい内容のことが多いため、積極的に利用するとよいでしょう。
公立学校講師:自治体に講師登録をする
講師とは、公立学校の教員に欠員が出た場合に、期限付きで採用される教員です。講師には、フルタイムで働く常勤講師とパートタイムの非常勤講師の2種類があります。
公立学校の講師になるには、自治体に講師登録をし、人員に空きができて採用の声がかかるのを待つ必要があります。講師登録をするには、募集のある校種・教科の教員免許状を所持していなければなりません。
私立学校教諭・講師:学校ごとの採用試験に合格する
私立学校の教員採用は、各学校が個別に実施しています。試験の内容は学校により異なりますが、各自治体の私学協会などが実施する「私立学校教員適性検査」を統一試験として採用しているケースも見られます。
年度ごとの採用の有無や採用スケジュールも学校によりまちまちです。そのため、各学校のホームページなどで採用情報を個別に確認して受験する必要があります。
30代から教師を目指す4つの強み
30代から教師を目指す強みは、社会人生活のなかで多くの人や業務と接し、さまざまな場面を経験したことで身に付いたスキルがあることです。新卒で教師になるのと比べて、転職した当初でも経験を活かして立ち回れる場面は多くあるでしょう。ここでは、4つの具体例を紹介します。
学校は民間経験者を求めている
一般的に、教師になる人は、学校組織で育ったまま学校で働く流れになります。学校内の事は熟知していたとしても、その分一般社会の雰囲気を知らないこともあります。教える対象となる子どもたちは、将来教員のみならず様々な職種を目指しています。そんな時、民間経験のある教師がいたら、子どもたちは社会への想像をより具体的にできて、幅を広げるサポートができます。様々な事情を持つ保護者にも対応しやすくなります。
コミュニケーション能力が身に付いている
教師として働き始めると、勉強を教えるだけでなく子どもたちや保護者、地域の人、同僚や他校の先生など多くの人と円滑にコミュニケーションを取ることが必要です。コミュニケーションをうまく取れるかどうかは、安心して子どもを任せられるか、信頼できる人物かどうかの評価につながります。
30代に至るまでの社会人経験の中で身につけたコミュニケーション能力は、教師として働くうえで大きな強みになるでしょう。
事務処理のスキルを活かせる
学校現場では、プリントの作成や成績データの処理など事務処理の業務も多くあります。会社などの業務で覚えた事務処理を効率よくこなすスキルは、教師としての業務の負担を軽減するのに役立つはずです。
問題解決能力が育っている
社会人として働いていると、不測の事態を自分の力で解決しなければならないシーンに数多く遭遇します。そのような中で育てられた問題解決能力は、学級や地域、家庭、教職員間などで発生するさまざまなトラブルを円滑に解決する力になるでしょう。
30代から教師を目指すルートはたくさんある
30代は、教師を目指すタイミングとして決して遅くありません。教員免許の取得には年齢制限はなく、教員採用試験も30代なら問題なく受験できる場合がほとんどです。
教師になるのに何が必要か、どのような方法があるのかを整理して、計画的に転職準備を進めましょう。
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