医療職、福祉職や介護職などから、キャリアパスの1つとしてケアマネジャーを検討されている方も多いでしょう。ケアマネジャーの役割は、介護サービスが必要な人とサービス事業所をつなぐことです。
ケアマネジャーは、2000年にスタートした介護保険制度の根幹を支える重要な専門職です。今回は、ケアマネジャーの資格概要や仕事内容、ケアマネ資格取得の流れをご紹介します。
ケアマネジャー(介護支援専門員)とは
ケアマネジャーとは、2000年に誕生した介護保険制度の根幹を支える介護支援サービス(ケアマネジメント)を担う重要な職種です。介護保険法では「介護支援専門員」として定められており、介護を必要とする人が抱える課題解決を支援します。
ケアマネジャーは、介護支援サービスが適切に利用されるために、重要な役割を果たす専門職です。受験資格を得るためには、厚生省が定める実務経験が必要とされていることから専門性の高い資格といえるでしょう。
2018年に実務経験として認められる対象資格が変更になり、資格取得が難しくなりました。資格取得の難易度が上がったことで、ケアマネジャーに対する社会的評価は高まっています。
ケアマネジャーは国家資格?
ケアマネジャーは、各都道府県が試験を管轄・実施し、合格者を登録する公的資格です。2022年3月現在、国家資格ではありませんが国家資格化への議論がなされているため今後の動きに注目しましょう。
ケアマネジメントの質の向上に向けた動きがあることから、今後、資格取得要件などのさらなる見直しが行われるかもしれません。実際に介護保険制度は2000(平成12)年4月の施行以来、何度も改正されています。
ケアマネジャーの資格取得後は5年ごとの更新制
ケアマネジャーの試験に合格後は、登録して介護支援専門員証を受け取ります。この介護支援専門員証は5年ごとに更新され、更新時には必要な更新研修を受ける仕組みです。
介護保険制度では、ケアマネジャーの「資質・専門性の向上」と「独立性・中立性の確保」を重視しています。
5年ごとの更新制は、2006(平成18)年4月の改正で導入されました。さらに2016(平成28)年度の研修カリキュラムの大幅な見直しがあり、更新研修の時間は長くなったのです。
ケアマネジャーが活躍している場所
ケアマネジャーは、主に次のような職場で活躍しています。
- 居宅介護支援事業所
- 入居系の介護老人福祉施設など
- 地域包括支援センター
ケアマネジャーの多くは、介護保険制度で定められたサービス事業者である居宅介護支援事業所で働いています。また施設に入所している利用者についてもケアマネジメントが行われており、それを担う立場としてケアマネジャーが配置されているわけです。
なお高齢者が相談できる地域包括支援センターは自治体、あるいは自治体から委託を受けた社会福祉法人などによって運営されています。
ケアマネジャーの役割と仕事内容
介護保険制度でケアマネジャーが果たす役割や仕事は、多岐に渡ります。ここでは、なんでもこなせる柔軟性や器用さが求められるケアマネジャーの役割や仕事について見ていきましょう。
要介護認定業務
介護保険制度を利用して在宅サービスや施設に入所する際に必要となるのが、要介護認定です。ケアマネジャーは本人や家族の代わりに申請を代行したり、実際の訪問調査を自治体から依頼を受けて代行したりすることがあります。
ケアプランの作成
ケアマネジャーの仕事は多岐に渡りますが、メインはケアプランの作成です。ケアプランは「介護サービス計画」ともいわれ、在宅サービスを受ける場合も施設入所の場合も、次の項目が記載されています。
- いつ
- どこで
- どのようなサービスを
- なんのために
- だれが
- どの程度
- いつまで行うのか
ケアプランに応じて、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスが提供される仕組みです。介護保険のケアプランは、介護サービスの利用者、またはその家族から同意を得る必要があります。
そのためケアマネジャーが、いきなり自分で作成することはできません。ケアマネジャーは、課題分析(アセスメント)を行い、ニーズを把握します。利用者の心身の状態を把握した上で、必要なサービスを決定していくのです。
モニタリングを通じて、利用者のニーズの変化に気づくこともケアマネジャーには求められます。
連絡調整役としての役割
介護サービス利用者やその家族と、個別のケースに関わる以下のようなサービス機関との連絡調整もケアマネジャーの重要な役割です。
- 自治体(市町村)
- 介護サービス事業者
- 主治医
- 住宅改修・福祉用具事業者
チームケアを進める「サービス担当者会議」の召集や司会進行も、ケアマネジャーの仕事です。不満点を解消しサービス品質を向上させるため、利用者にかわって苦情を申し入れることもあります。
給付管理業務と書類作成
サービスを提供すると、介護サービス事業者は介護給付費を国民健康保険団体連合(以下、国保連)に請求します。その際に必要になるのが、ケアマネジャーが作成する「給付管理表」です。
他にも個々のサービス利用者に対して「サービス利用表」「サービス利用表別表」を作成します。月の上旬や下旬は書類作成など給付管理業務に追われながら、利用者からの相談や新規利用者からのケアマネジメントの依頼に対応することを想定しておきましょう。
ケアマネジャー資格取得の流れ
ケアマネジャーを目指す方は、まず介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格を得る必要があります。その後の資格取得の流れは次のとおりです。
- 介護支援専門員実務研修受講試験に合格
- 合格したら実務研修を受けて登録へ
ここでは、それぞれのステップの大まかな流れをご紹介します。
ステップ1:実務研修受講試験に合格
ケアマネジャー試験の受験資格を得るためには、指定された業務で「実務経験が通算5年以上、かつ900日以上」が必要です。
実務経験とは、主に次のような保険医療福祉分野での国家資格に基づく実務経験や、生活指導員など相談援助業務の経験を指しています。
- 医師
- 看護師
- 社会福祉士
- 介護福祉士
介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格を得る要件の難易度は、非常に高いといえるでしょう。
試験の内容は、ケアマネジャー業務に関する基本知識や技術の確認です。介護支援分野、および保健医療福祉サービス分野から出題されます。出題は五肢複択方式で、解答はマークシート方式です。
なお受験する都道府県を、自由に決めることはできません。原則、実務経験を積んだ主たる勤務地の所在する都道府県となります。「受験資格」「研修の日程」「合格後の手続き」については、勤務地のある都道府県に問い合わせてください。
ステップ2:合格したら実務研修を受けて登録へ
介護支援専門員実務研修受講試験に合格したら、実務研修を受けて都道府県へ登録する流れです。合格通知に記載された「介護支援専門員実務研修の受講手続き」にそって研修を受けましょう。
実務研修は、都道府県もしくは都道府県知事の指定した研修機関で実施されます。実務研修の内容は、具体的には次のとおりです。
- 介護サービス計画書(ケアプラン)の作成
- モニタリングの実施
- 要介護認定等に関する専門知識
講義形式と演習形式を合わせて、通常、前期・後期で87時間以上の研修が実施されます。実施時期は都道府県ごとに異なりますが、カリキュラムは国が定めたものです。主に次のような方々が、講義を担当します。
- 介護支援専門員指導者
- 大学教員
- 県・市区町村の行政担当職員
研修を修了すると、各都道府県において介護支援専門員の「登録」を行えます。都道府県知事あてに交付申請を行い「介護支援専門員証」を受け取ると、晴れてケアマネジャーとして業務を行える流れです。
複数の業務をこなす柔軟性が必要
介護サービスを受けながら生活している人にとって、ケアマネジャーは不可欠な存在です。利用者やその家族への対応、各サービス機関と交渉し連携を図るほか、ケアプラン作成や各種書類作成など数多くの仕事を抱えています。
ケアマネジャーに求められる資質は非常に幅広いため、なんでもこなせる柔軟性が必要です。利用者や家族に寄り添いながらコーディネートを行う業務内容に魅力を感じる方は、ケアマネジャーを目指してみてはいかがでしょうか。