看護師は安定した収入や、仕事場が多いことで労働環境が選びやすいこと、年齢制限がないことで人気の資格です。
社会人から看護師の資格取得を目指す人も多く、「令和3年度看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」によりますと、全国で准看護師課程のある学校に入学した方6,827名のうち、25歳以上の方が3,358名と半数近くにのぼっています。
さらに24歳以下でも社会人経験のある方を含めるとさらに多くなりますので、社会人になってから学んでも遅くはありません。
今回は社会人の方が看護師になるための方法、特に准看護師になる方法やメリット、受験方法などについてご紹介します。
准看護師は正看護師と何が違う?
看護師には大きく分けて看護師(以下、准看護師とわかりやすく区別するために「正看護師」と表記)と准看護師の2種類がありますが、まずはその違いについて説明します。
准看護師と正看護師の違い
具体的に准看護師と正看護師は何が違うのか、具体的にまとめてみました。
比較項目 | 准看護師 | 正看護師 |
最終学歴 | 中学校卒業以上 | 高校卒業以上 |
取得に必要な期間 | 2年以上 | 3年以上 |
履修時間 | 総時間数:1,890時間以上 ・基礎科目70時間、専門基礎科目350時間 ・専門科目1,470時間 (うち臨地実習735時間) | 【総時間数】3,000時間以上 【総単位数】97単位 ・基礎分野13単位、専門基礎分野21単位 ・専門分野63単位(うち臨地実習が23単位) ※3年課程は2022年度、2年課程は2023年度から以下のように単位見直し 【総単位数】102単位 ・基礎分野14単位、専門基礎分野22単位 ・専門分野66単位(うち臨地実習が23単位) |
資格の発行元 | 都道府県知事の免許 | 厚生労働大臣の免許 |
仕事 | ・保健師助産師看護師法第6条に基づく ・医師/歯科医師または看護師の指示を受けて、傷病者やじょく婦(出産後しばらくの間にある女性)に対する療養上の世話、または診療の補助を行う | ・保健師助産師看護師法第5条に基づく ・厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者やじょく婦に対する療養上の世話、または診療の補助を行う |
業務範囲 | 自らの判断による看護業務はできず、医師や看護医の指示を受ける必要がある | 自らの判断により看護を提供できる |
キャリアアップ | 正看護師 | 保健師、助産師、特定看護師、専門看護師、認定看護師、診療看護師 |
准看護師の仕事内容
業務の範囲としては、正看護師も准看護師も患者さんのケアや診察の補助を行うという点で、基本的には変わりません。しかし、准看護師は上記の表にあるとおり、「医師・歯科医師または看護師の指示を受けて」業務を行います。
「令和2年看護関係統計資料集」によると、准看護師は2019年末時点で約30万人が就業しており、病院と診療所で合わせて約7割、そのほかに居宅サービス等、介護老人保健施設、介護老人福祉施設などで勤務しています。
准看護師のメリット
正看護師と准看護師で基本的な業務に違いはないものの、社会人が看護師になるためには、まずは准看護師を目指すことをおすすめします。
社会人にこそ勧める2つの理由
今の仕事からできるだけ早く看護職に就きたいということであれば、資格取得にかかる時間は短く、資格は取りやすいほうが良いでしょう。本項では、社会人にこそ准看護師を目指してほしい理由を2つご紹介します。
資格が取得しやすい
准看護師は資格を取るまでの期間が正看護師よりも短く、専門学校の学費が少ないのがメリットです。費用面のメリットだけではなく、特に時間が取りづらい社会人にとっては履修時間が少ないこともメリットがあります。
また、正看護師を養成する学校は基本的に全日制ですが、准看護師の場合は平日の午後や夜間だけ授業を行う半日制もありますので、自分の勤務状況に合わせて勉強しやすい特徴もあります。まずは学校のカリキュラムを確認したうえで、場所などを考慮して仕事をしながらでも無理なく通えるかどうか、確認しておきましょう。
受験が比較的簡単
准看護師試験は令和2年度で合格率が99.0%と非常に高く、令和3年度正看護師試験の合格率90.4%と比較しても高い水準にあります。また、試験は都道府県ごとに年1回ではあるものの、試験日は6つの地域ごとで異なるため、何度か受けることもできます。
准看護師のデメリット
准看護師は正看護師よりも目指しやすい一方で、いくつかのデメリットがあります。
求人募集における制約
看護師の求人について、大学病院や総合病院などは正看護師のほうを採用する傾向が強く、准看護師の採用自体を行なっていないというケースもあります。病院で中期的な視点から看護師を育てたいというケースや、よりスキルの高い看護師を採用したいという考えによるものかもしれません。
一方で勤務時間や日数を減らしたパート勤務の求人については、准看護師を求める傾向にあります。
給与面などでは不利
正看護師と准看護師で基本的な業務は同じと説明しましたが、給与の金額には大きな差があります。勤続年数にもよりますが、准看護師のほうが年収で50万円以上低いという調査結果があり、給与面では正看護師が有利ということになります。
給与額 | 准看護師 | 正看護師 |
所定内給与額 | 26万9,000円 | 30万9,100円 |
年間賞与その他特別給与額 | 67万4,100円 | 85万7,500円 |
准看護師になるには
ここでは、准看護師になるまでの一般的な流れについて説明します。
准看護師までのフロー
准看護師になる方法としては、養成するための学校に入学し資格の取得を目指す流れが一般的です。
看護学校への入学
准看護師の受験資格は中学校卒業以上であるため、看護学校の入試問題は中学校レベルのものにとどまっています。試験科目は学校により異なるため、受験先ではどの科目が出題されるのか、あらかじめ募集要項などで確認してください。国語・数学・社会・理科・英語・作文・小論文などの中から数科目程度が出題され、面接も行われる場合もあります。
看護学校での勉強
看護学校では2年間で准看護師の受験資格を得るための教育を受けます。1日3時間程度の授業を行っている学校もあり、働きながら通うことも可能です。おもに1年目は履修・2年目は実習となります。
准看護師資格の受験
受験は毎年2月に行われますが、事前に受験案内を入手したうえで、受験要綱(試験日時・試験会場・受験資格・提出資料・提出期限・提出先)などを確認します。受験手数料は所定の納入通知書を元に金融機関で支払処理を行い、領収済証明書を願書に貼り付け、提出します。
准看護師試験は、以下の科目について4者択一のマークシート方式により、150問が出題されます。
- 人体の仕組みと働き
- 疾病の成り立ち
- 感染と予防
- 患者の心理
- 看護と倫理
- 看護と法律
- 薬物と看護
- 食生活と栄養
- 基礎看護
- 成人看護
- 老年看護
- 母子看護及び精神看護
- 保健医療福祉の仕組み
資格取得の手続き
合格発表は3月に行われますが、合格後はできるだけ早く免許申請手続きを行いましょう。申請後から免許証発行までに数か月かかることもあります。自分の住民票に記載されている住所地の都道府県知事に申請します。
働きながら准看護師を目指す方法
専門学校などの准看護師養成所では、全日制と半日制のカリキュラムが組まれています。特に働きながら学校に通いたい場合は、カリキュラムの時間を確認しておきましょう。学費は通信制が1番安く、定時制は学ぶ期間が長くなる分、授業料は多くなります。
働きながら学ぶといってもフルタイムで働くのは難しいため、貯金や給料を元にどれくらい学費が支払えるのかについては、事前に試算しておきましょう。支払いが難しい場合は、日本学生支援機構や都道府県、自治体が運営している奨学金を検討してみてください。
また、病院付属の学校であれば、准看護師になって指定の病院で働くと支払いが免除されるケースもあります。
正看護師へのステップアップも可能
准看護師の資格を取得すると晴れて看護師の仕事に携われますが、准看護師になったあと、さらに正看護師を目指すことをおすすめします。
正看護師をおすすめする理由
先程、准看護師のデメリットの項でお話したとおり、准看護師よりも正看護師の方が収入はアップします。求人募集の幅が広がることはもちろん、管理職につけなかったり、新人への教育や指示ができなかったりするなど、もしも長く仕事を続けてキャリアアップを図りたいのであれば、正看護師の方が良いということになります。
正看護師になる方法
准看護師から正看護師になるためには、看護師養成所で2年(定時制は3年)勉強した後、看護師の国家資格試験に合格する必要があります。これは直接正看護師になるよりも、勉強期間は1年短くて済みます。または、准看護師として7年の実務経験があると、通信制2年でも受験資格を得ることができます。
社会人はまず准看護師から
今回は、現在社会人の方が看護師になりたい場合に、准看護師をおすすめする理由や准看護師資格を取得する方法、受験の詳細などについて紹介しました。社会人になってから看護師を目指す人は少ないわけではなく、働きながら看護学校で学ぶことができます。
社会人から看護師への転職を目指す場合は、まずは准看護師から目指してみてはいかがでしょうか。