介護福祉士になるにはいくつかの方法があります。大学や短大、専門学校の介護福祉士養成する学科に進むのがスタンダードです。そこで迷うのが大学と短大と専門学校のどれに通うかということではないでしょうか。後々後悔しないためにもこの3つの違いを把握したうえで、進学したいものです。
今回は、介護福祉士を目指す方に向けて、大学と短大、専門学校それぞれの内容の相違点、在学費用やカリキュラムについてご紹介します。
専門学校と短大と大学の内容比較
平成29年度(2017年)から、「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正により「養成施設」と呼ばれる大学や短大、専門学校の介護福祉士養成する学科を卒業することが介護福祉士国家試験の受験資格となりました。
文部科学大臣及び厚生労働大臣の指定学校、または都道府県知事指定の養成施設を卒業した方は、実技試験は免除されます。
養成施設は全国に約500校あり、2年制か4年制がほとんどです。大学と短大と専門学校の中で、自分に合っているのはどの養成施設なのか、学ぶ期間や学べる内容を確認して、学校を選びましょう。
介護福祉士を最短で取りたいなら2年制
養成施設は学校によって通うべき期間が異なります。最短で介護福祉士の資格を取得したい方は、2年制の専門学校か短大で学び、資格取得するルートがおすすめです。
通う期間の比較 | 専門学校 | 短大 | 大学 |
年数 | 2年 | 2年 | 4年 |
在籍期間に比例する在学費用
通う期間が長いとその分学費がかさみます。大学と短大と専門学校では、当然4年通う大学が、一番費用がかかります。国立大学と比較しても、専門学校や短大の方が学費は少なくてすむでしょう。学費を抑えたいなら2年制の専門学校か短大がおすすめです。
短大と専門学校は同じ2年制ですが、短大の方が学費はかかる傾向です。実家を離れて学校に通う方はそれ以外にも住宅費用などがかかるので、卒業までどれくらいの教育費が必要か確認しましょう。
以下の在学費の比較表は、日本政策金融公庫が公開している令和3年度「教育費負担の実態調査結果」より作成しました。
在学費比較 | 専門学校 | 私立短大 | 国立大学 | 私立大学 |
年間費用 | 233.8万円 | 290.0万円 | 414.0万円 | 608.0万円 |
令和9年度から資格取得ルートが変更
介護福祉士資格取得ルートが、令和9年度から変わります。
卒業年度 |
介護資格取得ルート |
平成29年度~令和8年度に卒業 |
国家試験受験→合格→介護福祉士資格取得 |
国家試験受験→不合格→5年間期限付きの介護福祉士資格取得→実務経験5年継続→介護福祉士資格取得 |
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国家試験受験→不合格→5年間期限付きの介護福祉士資格取得→国家試験合格→介護福祉士資格取得 |
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国家試験を受験しない→5年間期限付きの介護福祉士資格取得→実務経験5年継続→介護福祉士資格取得 |
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国家試験を受験しない→5年間期限付きの介護福祉士資格取得→国家試験合格→介護福祉士資格取得 |
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令和9年度以降に卒業 |
国家試験受験→合格→介護福祉士資格取得 |
カリキュラムの比較
養成施設のカリキュラムでは、国で決められた介護福祉士に必要な専門科目があります。医療的ケア(喀痰吸引等)の領域は平成27年度から加わりました。
介護福祉士は、介護が必要なお年寄りや障害のある方がスムーズな生活が送れるように介助や援助をするだけのように思われがちですが、それだけではありません。時には、ご家族からの相談にのることもあり、精神面の支えになることも役割のひとつです。
領域 |
必修専門科目 |
必修時間 |
人間と社会 |
⼈間の尊厳と⾃⽴ |
30時間以上 |
社会の理解 |
60時間以上 |
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⼈間関係とコミュニケーション |
60時間以上 |
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介護 |
介護の基本 |
180時間 |
コミュニケーション技術 |
60時間 |
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⽣活⽀援技術 |
300時間 |
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介護過程 |
150時間 |
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介護総合演習 |
120時間 |
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介護実習 |
450時間 |
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こころとからだのしくみ |
こころとからだのしくみ |
120時間 |
発達と⽼化の理解 |
60時間 |
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認知症の理解 |
60時間 |
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障害の理解 |
60時間 |
|
医療的ケア |
医療的ケア |
50時間以上と演習 |
授業内容の比較
短大や大学では必須の専門科目以外に、一般教養科目やキャリア形成科目が加わります。学校によって一般教養科目やキャリア形成科目の内容に違いがあります。
授業時間の比較
2019年4月から介護福祉士養成課程が改正され、介護福祉士の養成課程は「1850時間」と決まりました。その内、介護実習は総時間数が「450時間」です。養成施設として国から認められた専門学校と短大と大学の養成課程時間はほぼ同じです。
しかし、短大と大学は国で卒業基準が単位制で決められていています。短大と大学は養成課程以外の課程でも単位を取得しなければ卒業ができません。卒業できなければ、介護福祉士の受験資格も取れないことになります。
一方専門学校は、単位制はなく卒業に必要な時間数が一定基準としてありますが、養成課程の「1850時間」はそれを越えています。
学校の種類 | 文部科学省で定められた卒業基準 |
専門学校 | 卒業までに必要な授業時間数は年間800時間以上 |
短大 | 卒業までに必要な単位数は62単位以上 |
大学 | 卒業までに必要な単位数は124単位以上 |
専門学校と短大と大学のメリット比較
専門学校と短大と大学にはそれぞれメリットがあるので、自身に一番適した進路を選びたいものです。ここではそれぞれのメリットとデメリットを取り上げ、どのような違いがあるかを比較します。
専門学校のメリット
専門学校は授業の約8割が介護福祉士になるための分野です。社会に出たときに即戦力として活躍できるよう、就職を意識したカリキュラムが組まれている点も特徴です。また、専門に特化した授業は、国家試験に直結していることから試験対策の時間が多く取れるとされます。
専門学校のデメリット
介護福祉士を目指すのには適していますが、もし他の職種に就職したい場合はハードルが高いと考えられます。看護福祉士になるという強い意志を持って進みましょう。
専門学校の施設に関して、国の設置基準では図書館や教員研究室などは「なるべく置くように」となっています。明確な決まりがない分、学ぶ環境に差があることも考えられます。オープンキャンパスに行ったときに、施設設備の環境が整っているか確認しましょう。
また、専門学校は学校によって就職率にばらつきがあるため、入学する時は比較検討されることをおすすめします。
こんな方は専門学校に進もう!
早く卒業して、早く現場で働きたい方に専門学校は向いています。また、専門学校は教養科目の受講時間が少ない分、短大と大学に比べると時間があります。介護福祉士の資格取得に集中し、すぐ活かせる実務的なスキルを身につけたい方には、専門学校がおすすめです。
短大のメリット
短大は大学と同じく国の設置基準に沿って、教授や准教授、講師などで教員が組織されています。また、校舎施設にも基準があり、図書館や研究室など設備も整い、学ぶための環境が充実しています。
介護福祉士になるための科目と一般的な教養科目もしっかりと受講できることは魅力のひとつです。卒業すると文部科学大臣が定める「短期大学士」学位が授与されます。これは国際的にも通用する学位です。もし、短大卒は、他の職種に転職したい場合でも通用するでしょう。
短大のデメリット
短大は2年間で一般教養と介護福祉について学ばなければなりません。加えて、介護福祉士国家試験対策と就職活動も行うこととなり、専門学校と大学と比べ、忙しい学生生活を送ることが想定されます。
こんな方は短大へ進もう!
短大によっては、介護福祉士受験資格だけでなく、社会福祉主事任用資格や介護保険事務管理土、福祉住環境コーディネーターなどの取得支援を行っているところもあります。
「介護福祉士の受験資格を早く取りたい」、それに並行して「介護福祉士以外の資格もとりたい」や「幅広く教養を身につけたい」と思う方には、短大は向いています。
大学のメリット
大学は、卒業すると文部科学大臣が定める「学士」学位が授与されます。幅広い分野の知識・教養を身につけられると同時に、介護福祉士の分野を深く研究することができ、充実した教育を受けることができる点は魅力です。
また、就職したとき、大卒は初任給基準も高く、収入面でも優遇されます。
大学のデメリット
大学は国家試験を取得するために最低4年かかります。また、一般教養も含めて広く学ぶことになるために、介護福祉のみを勉強するわけにもいきません。4年間あるとはいえ卒業論文もあるので、国家資格取得のための時間配分には、注意が必要です。
こんな方は大学に進もう!
大学は、介護福祉士の受験資格だけでなく、精神保健福祉士や社会福祉士の受験資格も取得可能です。また、福祉心理士や教職への道もあり、多くの資格取得やキャリアアップを目指したい方に向いています。
介護福祉士は介護分野で唯一の国家資格
令和3年9月末時点で、介護福祉士の登録者数は181万3,112人です。年々人数は増えていますが、今後高齢化が進むとされていて、高い専門性を有する介護福祉士はますますニーズが高くなると想定できます。介護福祉士になると多くの介護現場から求められ、活躍の場には困らないでしょう。
専門学校と短大と大学はそれぞれに教育の特色と強みがあります。ぜひ、今回ご紹介したことを参考にして、自分に合った学校を見つけ、介護福祉士になる夢をかなえてください。