何らかの理由で離職した場合、収入がなくなるため再就職までの生活が不安定となります。失業中も生活費となる給付金を受けながら求職活動ができるのが、失業保険です。失業保険は利用できる条件や基本手当、再就職手当など給付される給付金がさまざまあります。
今回は、失業保険の給付金の金額や受け取れる期間、さらに再就職後に受け取れる再就職手当についてご紹介します。再就職やスキルアップに役立つ就職訓練を受けながら失業保険を受給する方法も解説していますので、ぜひ役立ててください。
失業保険の「基本手当」について
失業保険とは、正式名称が「失業等給付」であり雇用保険の被保険者が何らかの理由により離職した場合、定められた期間に給付金が支給される制度です。失業中に受給できる失業保険は、「基本手当」と呼ばれています。収入のなくなる失業中の生活を心配せず、再就職のための活動を行うために給付金が支給されます。
基本手当の受給要件や給付までの流れ、給付金の金額、期間について解説します。
失業保険を受けられる条件
基本手当を受けるためには、以下の条件を満たし「失業状態」であると認められなければいけません。
- すぐに就職できる状態、かつ本人に就職の意思があるのに就職できない状態
- 離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が12か月以上ある(特定受給資格者または特定理由離職者は、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算6か月以上)
基本手当を受け取れるのは、働きたいのに働けない状態にある人です。つまり、病気や妊娠、出産などの理由で今すぐに働けない人は失業保険の給付は受けられません。
申請から給付までの流れ
失業保険の申請から給付までの流れをまとめました。
- 勤めていた職場から離職票を受け取る
- ハローワークで求職申し込みと離職票の提出をする
- 7日間待機する
- 雇用保険受給説明会を受ける
- 失業認定日(初回認定日)認定を受ける
- 基本手当が振り込まれる
初回の基本手当支給日は、離職した理由によって異なります。会社都合・定年・契約期間満了による退職の場合は、初回認定日から通常5営業日で指定した口座へ基本手当が振り込まれます。ただし、自己都合による離職の場合は待期期間満了日の翌日から3か月間(令和2年10月1日以降の離職の場合、5年間のうち2回までは2か月)の給付制限を受けたあとに、基本手当の支給が開始されます。
失業保険の給付期間が終わるまで、4週間ごとの失業認定日に失業認定、基本手当の振込が繰り返されます。失業認定日に失業認定を受けるためには、原則月2回以上の就職活動の実績が必要です。以下が就職活動の実績にあたります。
- 求人へ応募する
- ハローワークで職業相談や職業紹介などを受ける
- ハローワークが実施する各種講習、セミナーを受講する
- 許可や届出のある民間機関(民間職業紹介機関、労働者派遣機関)が行う
- 職業相談や職業紹介など、求職活動方法などを指導するセミナーを受ける
- 公的機関(求人情報提供会社、高齢・障害・求職者雇用支援機構、地方自治体、新聞社など)が実施する職業相談や各種講習・セミナーに参加する
- 個別相談ができる企業説明会などに参加する
- 再就職に関連する各種国家試験・検定などの資格試験を受験する
給付される金額
失業と認定された期間に「基本手当日額」をかけた金額が、基本手当として支給されます。
基本手当日額は、原則は離職した日の6か月までの定められた金額で支払われた賃金(賞与などは除く)の合計金額を、180で割って算出した金額の50~80%(60歳~64歳だと45~80%)です。
賃金が低ければ低いほど、基本手当日額は高くなります。基本手当日額は年齢によって上限が以下のように定められています(令和3年8月現在)
年齢 | 基本手当日額の上限 |
30歳未満 | 6,760円 |
30歳以上45歳未満 | 7,510円 |
45歳以上60歳未満 | 8,265円 |
60歳以上65歳未満 | 7,096円 |
給付される期間
基本手当が給付される期間は、原則は離職日の翌日から1年間(所定給付日数が330日の人は1年+30日、360日の人は1年+60日)です。
ただし、受給期間中に何らかの理由で引き続き30日以上働けなくなった場合、その日数分だけ受給期間を延長できます。ただし、延長できるのは最大で3年まで(所定給付日数330日および360日の人は、それぞれ最大限3年-30日または3年-60日)です。
受給期間を延長する場合には、延長後の受給期間の最後の日までにできるだけ早くハローワークへ申請しなければいけません。
【求職者支援制度の詳細はこちら】
新しく職業を見つけるための求職者支援制度について、詳細を以下の記事で解説しています。
失業保険の「再就職手当」について
失業保険の基本手当は失業認定を受けている間支給される給付金のため、「就職せずに受給を続けていた方が良いのでは」と考える人がいるかもしれません。失業保険には、基本手当受給中に再就職をしたときに受け取れる「再就職手当」があります。失業保険の再就職手当について解説します。
再就職手当を受けられる条件
再就職手当は、以下8つの要件を満たすと受けられます。
- 受給手続き後7日間の待機期間満了後に安定した職業へ就く、または事業を開始する
- 基本手当の支給残日数が1/3以上ある
- 離職前の事業所および関連する事業所への再就職ではない
- 給付制限がある場合、待機経過1か月内の就職はハローワークまたは職業紹介事業者からの紹介によるもの
- 1年を超えて勤務することが確実である
- 原則として雇用保険の被保険者となる
- 過去3年間再就職手当や常用就職支援手当を受けていない
- 失業保険の受給資格決定前から内定していた就業ではない
支給される金額
再就職手当として支給される金額は、失業保険の基本手当支給残日数によって異なります。
失業保険の基本手当支給残日数 | 支給される金額 |
2/3以上 | 支給残日数の70%の額 |
1/3以上 | 支給残日数の60%の額 |
早く再就職が決まれば決まるほど支給される金額は多くなります。
就職促進定着手当が支給されることもある
再就職手当の支給を受けて以下の条件を満たすと、就職促進定着手当が支給されます。
- 再就職先に6か月以上雇用される
- 再就職先の6か月間の賃金の1日分の額が、雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)に比べて低下している
常用雇用以外なら就業手当が支給される
再就職手当の受給条件に「安定した職業に就く」ことがあるため、常用雇用など以外の形態での再就職は、再就職手当の支給対象外となります。ただし、一定の要件を満たすと「就業手当」が支給されます。
基本手当の残支給日数が1/3以上かつ45日以上ある場合、就業日×30%×基本手当日額(上限1,836円、60歳以上65歳未満は上限1,485円)が就業手当として支払われます。
基本手当にプラスして給付される「技能習得手当」
失業保険の基本手当を受給中、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練などを受けると「技能習得手当」が基本手当とは別に支払われます。技能習得手当には、以下の2つがあります。
- 受講手当
- 通所手当
それぞれの手当について解説します。
受講手当
基本手当の支給の対象となる日に、公共職業訓練などを受けると受講手当が支給されます。受講手当は1日あたり500円で、上限額は20,000円です。
通所手当
公共職業訓練を行う施設や学校へ通所する際に、交通機関や自動車などを利用すると通所手当が最高42,500円まで支給されます。支給対象にならない日がある月は、日割りで減額して支給されます。
失業保険は基本手当のほか再就職手当も用意されている
失業保険の基本手当の受給条件や支給される金額や期間、再就職手当や技能習得手当について解説しました。失業保険の基本手当を受けるには、失業認定を受けるための就職活動や認定日のハローワークへの来所が必要です。再就職した場合には再就職手当、基本手当を受けながら職業訓練を受けると技能習得手当も支給されます。失業保険をぜひ再就職に活かしましょう。