教員は地方公務員のため、給料は給料表で決まっています。民間企業と大きな差がでないようになっているとはいえ、どのくらいもらっているのか気になりませんか?転職を考えるなら尚更、しっかり把握しておきたいですよね。
今回は、教員の福利厚生と給料について解説します。平均給料や手当、賞与を民間企業と比較してみました。後半は退職金についてもまとめましたので、人生プランをイメージしながら、ぜひ最後までご覧ください。
教員の福利厚生は?休暇や育休のとりやすさ
教員の福利厚生といえば「共済組合制度」です。共済組合制度は、国公立・私立の教員の福利厚生制度です。公立学校の教員になれば自動的に組合員となり、掛金などを支払います。共済組合制度について、くわしく解説します。
共済組合制度の短期給付金
共済組合制度は法定福利のひとつです。民間企業が加入する健康保険のような医療給付金(短期給付)を受けられるほか、人間ドックや健康診断なども割引価格で受けられます。医療給付金の一部をご紹介します。
保健給付 | 休業給付 | 災害給付 |
・療養の給付・家族療養費など ・入院時食事療養費 ・入院時生活療養費 ・訪問介護療養費など | ・傷病手当/傷病手当金附加金 ・休業手当金 ・出産手当金 ・育児休業手当金 ・介護休業手当金 | ・弔慰金/家族弔慰金 ・災害見舞金 |
医療給付以外にも、長期給付(年金)や厚生サービスも備えています。
ベネフィットステーションが利用できる
大手起業も導入している複利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」を利用できます。映画やショッピング、グルメ、車など生活のあらゆるサービスを会員価格で利用することが可能です。
旅行は共済組合の福祉事業「やすらぎの宿」で全国の宿・ホテルに会員価格で宿泊できます。定年退職後も宿泊できるため、お得に旅行を楽しむことが可能です。
特別休暇と有給休暇の平均取得日数
「教員勤務実態調査(平成28年度)(確定値)について」によると小学校と中学校の教員に取得した有給休暇日数でもっとも回答数が多かったのは6~10日間でした。年次有給休暇は20日間ありますが、そのうち6~10日間しか取得できないのは少し厳しいように感じます。
東京都では「東京都公立学校教員採用ポータルサイト」で、有給休暇の平均取得数を公表しています。2019年度は15.5日取得実績があり、民間の平均取得日数9.4日間を上回っています。
教員の平均給料・手当・賞与は?
総務省が2023年12月24日に公表した「令和3年地方公務員給与実態調査結果等の概要」より、教員の平均給与月額を学校種別にまとめました。
学校種別 | 平均給料月額 |
小・中学校教員 | 409,427円 |
高等学校教員 | 434,149円 |
上記平均給料月額は、諸手当を含みます。一方民間の平均給料月額は、事業規模5,000人以上で約411万円で平均給料月額は約34万円ということがわかります。
ここから割り出すと平均給料月額の差は、約6~9万円ということがわかります。教員と比べると低いものの、大きな差はありません。教員の給料はどのようにして決められているのか、手当や賞与について解説します。
教員の給料は「給料表」で決まっている
教員のほとんどは地方公務員です。地方公務員の給料の支給額は、人事院が定めた「給料表」の「職務の級」と「号給」の組み合わせで決まります。
- 職務の級:教諭・主任教諭・校長など役職で異なる
- 号給:成績により異なる
給料表は自治体ごとに異なり、同じ級と号給の組み合わせでも自治体によってもらえる給料が若干異なります。政令指定都市は都道府県とは別で採用試験を実施していることもあり、設定している給料も異なります。
給料は自治体の財政によって左右されるため、小規模な自治体の教員ではあまり多くは望めないでしょう。また、地方公務員は年功序列の傾向が強いため、年齢や勤続年数に応じて給料は高くなります。
教員の給料に加算される手当
給料表で決められた給料にくわえて、各種手当が加算されます。東京都の学校で教員として働く場合、以下のような手当が働き方に応じて加算されます。
手当 | 手当の内容 |
教職調整額 | 管理職以外の教員に給料表月額の4%が支給 |
義務教育等教員特別手当 | 優秀な人材を確保することを目的とした手当 |
教員特殊勤務手当 | 土日などの部活動指導、修学旅行などの郊外引率業務で支給 |
給料の調整額 | 特別支援学校勤務・小中学校の特別支援学級担任の教員に支給 |
へき地手当 | 山間地や離島にある学校で働く教員に支給 |
産業教育手当 | 水産業または工業など産業教育に従事する教員へ支給 |
定時制通信教育手当 | 定時制教育や通信教育に携わる教員へ支給 |
地域手当 | 民間との差を埋めるために地域別に支給 |
管理職手当 | 校長・副校長に支給 |
期末・勤勉手当 | 民間の賞与に相当する給料を6月と12月に支給 |
その他 | 扶養手当、通勤手当、住居手当、単身赴任手当など |
期末手当・勤勉手当は高い?
期末手当と勤勉手当は民間企業でいう賞与のようなもので毎年、6月と12月に支給されます。
- 期末手当:在職期間に応じて支給率が変わる
- 勤勉手当:勤務成績の査定評価で支給率は変わる
期末・勤勉手当は民間と大きな差がうまれないように、都道府県が人事院から勧告を受けて決められています。2021度の期末手当・勤勉手当は以下のとおりです。
手当 | 6月 | 12月 |
期末手当 | 1.275か月 | 1.125か月 |
勤勉手当 | 0.95か月 | 0.95か月 |
それぞれの支給割合は職務の級や都道府県によっても異なります。
平均月額給料から上記をあてはめると、教員の年間賞与は以下のようになります。
学校種別 | 期末手当・勤勉手当の平均 |
小・中学校教員 | 約78万円 |
高等学校教員 | 約82万円 |
民間企業の平均賞与67万円よりも上回っていることがわかります。
2023年度以降からは民間の支給割合をふまえて、期末手当の支給割合が下げられることが決まっています。
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教員の学校種別の平均年収
ここまで解説した教員の平均給料や手当を合計すると、学校種別の平均年収は以下のとおりです。
学校種別 | 平均年収 |
小・中学校教員 | 約647万円 |
高等学校教員 | 約684万円 |
国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査結果」による民間企業の平均年収443万円と比べると、大きな差があることがわかります。
ただし民間企業でも資本金10億円以上の大企業になると平均年収は615万円と教員の平均年収にぐっとちかづきます。賞与額においては平均100万円となるため、教員の給料を超える民間企業の会社員は多くはないことがわかります。
教員の学校種・学歴別の初任給
教員の初任給は所有している免許状の種類で級が決まり、前職の勤続年数を反映するかで初任給が変わります。厚生労働省の「令和3年度賃金事情等総合調査」を参考に、学校種と学歴別の平均初任給をまとめました。
学校種別 | 大学卒 | 短大卒 |
小・中学校 | 209,495円 | 186,520円 |
高等学校 | 209,531円 | 201,042円 |
「令和元年賃金構造基本統計調査(初任給)の概況」より、民間企業の学歴別の平均初任給をまとめました。
大学卒 | 高専・短大卒 |
210,200円 | 183,900円 |
初任給は大きな差がないように思われますが、手当の支給額によって給与差が生まれてきます。教員の初任給は年々増えており、働き方改革にともなってさらなる改善も期待できるでしょう。
教員の退職金は民間企業より高い?
一般的に教員の退職金は高いと言われることがあります。総務省が2021年4月1日に実施した「地方公務員給与実態調査結果」によると、教員の定年時における平均退職金額は約2,256万円ということがわかりました。
民間企業の平均退職金は企業規模と退職時の月額給与、勤続年数で異なります。厚生労働省の「令和3年度賃金事情等総合調査」より、定年まで働いた場合の平均退職金額は約1,872万円です。学歴別だと以下のようになります。
学歴別 | 退職金額 |
大学卒 | 約2,230万円 |
短大・高専卒 | 約2,155万円 |
高校卒 | 約2,017万円 |
大学卒でも教員の平均退職金額には届いていません。
教員の退職手当の基本額は、下記の計算式で算出します。
・教員の退職手当の基本額 = (退職時給料月額 × 退職理由別・勤続期間別支給率) + 調整額
給料月額は所有している教員免許でも変わってくることから、退職後の生活は所有している教員免許状の種類でも変わることがわかります。教員として働くなら、教職課程を履修できる大学で取得できる普通免許状を取得しておいたほうがよいことがわかります。
福利厚生が充実の教員は転職する価値あり!
教員の福利厚生は大手企業と同レベルのものをそろえているうえに、共済貸付や民間企業と同様のものがそろっています。給料や年収、初任給も大きな差はありません。もちろん毎月の給料は学歴によって異なりますし、受けられる福利厚生や手当の支給額も変わってきますが、安定した職で子どもにも夢を与えられる、やりがいの絶えない仕事ですので、ぜひ転職先として考えてみてください。
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