意外とチャンスは多い!?教員採用試験の年齢制限緩和の背景とは

教員に年齢制限はない!?制限撤廃の背景と注意点

教員採用試験には、各自治体ごとに条件として受験要綱が定められています。そのひとつが年齢制限です。ただし社会人の皆さん、ご心配なく。近年の教員採用試験を取り巻く環境の変化で、徐々に年齢制限を緩和または撤廃する自治体も増加傾向にあります。

せっかく培った社会での経験を、教育現場にぜひ活かしていただくために、今回は教員採用試験の年齢制限やその背景、年齢以外の条件について解説します。

教員採用試験の受験年齢制限状況

青い背景にカラフルな数字が並んでいる

文部科学省発表「令和3年度(令和2年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施方法」より、教員採用試験の年齢制限の現状について解説します。

教員採用試験の受験年齢制限の推移

68県市における平成28年度から令和3年度までの、教員採用試験の受験年齢制限の推移を以下にまとめました。

  実施年度自治体数の推移
制限なし51~58歳41~50歳36~40歳
平成28年度 (平成27年度実施2512418
平成29年度 (平成28年度実施2812415
平成30年度 (平成29年度実施321269
令和元年度 (平成30年度実施)332285
令和2年度 (令和元年度実施)411233
令和3年度 (令和2年度実施471182

教員採用試験の基本要件として年齢制限を撤廃、または引き上げる自治体は増加傾向にあることがわかります。

各地自体ごとの教員採用試験の年齢制限

教員採用68県市における教員採用試験の年齢制限を以下にまとめました。

年齢制限自治体数
制限なし47
51~58歳1
41~50歳18
36~40歳2

年齢制限を設けている自治体の内訳は以下の通りです。

年齢制限自治体名具体的な年齢
51~58歳さいたま市58歳
41~50歳栃木県44歳
石川県49歳
滋賀県49歳
大阪府45歳
山口県49歳
徳島県49歳
香川県49歳
高知県49歳
長崎県49歳
熊本県49歳
鹿児島県49歳
沖縄県45歳
名古屋市49歳
京都市49歳
大阪市45歳
岡山市44歳
福岡市50歳
豊能地区45歳
36~40歳東京都39歳
奈良県39歳

調査対象となった68県市のうち、約69%にあたる47の自治体が教員採用試験の受験条件として年齢制限を設けていないことがわかりました。年齢制限を設けている場合の最高年齢はさいたま市の58歳、最低年齢は東京都と奈良県の39歳です。

前年度から年齢制限を変更した自治体

前年度(令和2年度)より年齢制限の受験条件を変更した自治体を以下にまとめました。

自治体名変更された年齢制限
岩手県49歳→制限なし
福島県50歳→制限なし
山梨県49歳→制限なし
香川県44歳→49歳
愛媛県49歳→制限なし
佐賀県49歳→制限なし
大分県50歳→制限なし
鹿児島県40歳→49歳
京都市44歳→49歳

教員採用試験の年齢制限を変更したいずれの自治体も、年齢制限の撤廃または引き上げをした結果となりました。

教員採用試験の年齢制限撤廃や緩和の背景

黄色の背景に横一列に本が並んでいる

文部科学省の調査結果により、近年は教員採用試験の年齢制限撤廃や引き上げを行っている自治体が増加傾向にあることがわかりました。教員採用試験の年齢制限撤廃や引き上げの背景にある理由や、今後の見通しとともに解説します。

全体的な教員不足

文部科学省が令和4年1月に発表した「「教師不足」に関する実態調査」より、学校種別の教師不足状況をまとめました。

学校種別不足率教師不足が発生している学校数
小学校0.26%794
中学校0.33%556
高等学校0.10%121
特別支援学校0.26%120

少子高齢化などの影響を受けて、全体的な教員不足の状態が続いています。自治体内での教員不足を解消するために、受験条件の年齢制限を撤廃もしくは引き上げて受験者の母数の増加を試みる自治体も多くなりました。

見込み数よりも多くの教員が必要になった

教員不足の原因のひとつに、自治体側が見込んでいた教員数よりも多くの教員が必要であることがあげられます。見込みよりも多くの教員が必要となったおもな理由第5位を、文部科学省が令和4年1月に発表した「「教師不足」に関する実態調査」よりまとめました。

  1. 産休・育休取得者数が見込みより増加
  2. 特別支援学級数が見込みより増加
  3. 病休者数が見込みより増加
  4. 採用辞退者数の増加により、必要な臨時的任用教員等が見込みより増加
  5. 児童生徒の転入等により学級数が見込みより増加

退職者数に採用人数が追い付かない

文部科学省発表の「小・中学校の退職者数の推移と見通し」では、平成23年末から令和4年末までで小中学校の退職者数が2万2,000~7,000人で推移しています。大量の退職者が出ている背景にあるのが、戦後の団塊ジュニア世代の大量採用です。教員数の母体を形成していた年代が定年を迎えたことも、教員不足の一因となっています。

同調査では、平成23年末から令和4年末までで小中学校の採用者数が2万1,000~6,000人で推移しています。少子高齢化による労働力不足のため、退職者数が採用人数を上回る年も多いです。今後も採用人数は減少傾向となることが予測されているため、年齢制限撤廃などで教員採用試験の門戸を広げる自治体は増加する見込みです。

臨時的任用教員のなり手不足

もともと産休や育休取得や病気急用により教員の欠員が生じた場合には、任用向け名簿に登録された臨時的任用教員が欠員の代替業務を行います。臨時的任用教員が以下の理由によって減少傾向にあるのも、教員不足の原因となっています。

  1. 講師名簿登録者数の減少
  2. もともと臨時的任用教員として勤務していた者の正規採用が進んだ
  3. 臨時的任用教員のなり手がすでにほかの学校に就職済み
  4. 臨機的任用教員のなり手がすでに民間企業などに就職済み
  5. 講師名簿登録者や退職教員が教員免許状を更新しておらず失効した、
  6. 更新手続きの負担により教員免許状の更新がされていなかった
  7. 本人の辞退

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教員採用試験の年齢制限以外の条件

木製の椅子がずらりと並んでいる

近年の教員採用試験の年齢制限の撤廃や引き上げにより、40歳以上の人にも教員採用試験に挑戦できるチャンスが広がっています。年齢制限と一緒にチェックしておきたい、教員採用試験のほかの受験条件について解説します。

必要な教員免許の取得

教員採用試験の募集要項で定められた期日までに、受験を希望する教員免許の取得が必要です。教員採用試験日に教員免許は取得していなくても、期日までの取得見込みでも認められている自治体が多くなっています。

教員免許は校種や教えられる科目によって種類が異なります。自分が目指したい教員や受験を希望する教員採用試験に合致した教員免許の取得を目指しましょう。

教員免許状取得の欠格事項にあたらない

「教育職員免許法第5条第1項第3号〜第7号」の教員免許状欠格事項に該当する場合は、教員免許の授与が受けられないため、教員採用試験も受験できません。

地方公務員法および学校教育法の欠格事項にあたらない

「地方公務員法第16条」および「学校教育法第9条」の欠格事項に該当する場合は、教員採用試験が受験できません。

正常な教育活動ができる状態

正常な教育活動に支障のある著しい障害と疾患を有している場合には、教員採用試験が受験できません。

現職の教員ではない

受験する自治体の公立学校に勤務する以下の立場の場合、教員採用試験は受験できません。

  • 教諭
  • 養護教諭
  • 栄養教諭
  • 寄宿舎指導員
  • 実習助手

ただし、現職の非常勤講師および臨時的任用教員は受験できます。

教員採用試験の年齢制限条件は撤廃か引き上げの傾向にある

教員不足解消の取り組みとして、教員採用試験の年齢制限条件撤廃や引き上げを行う自治体は今後も増加する傾向です。

年齢制限で教員採用試験の受験をあきらめていた方にも、チャンスがあります。社会人からぜひ教員採用試験に挑戦しましょう。

教員採用試験の受験を決めたら、まず思い浮かぶハードルは筆記試験ですよね。以下の記事で、社会人が筆記試験を突破する対策方法を解説していますので、ぜひご覧ください。


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