教員採用試験に合格すると、正規採用の教員になれます。一方で、受験の結果に万が一があっても、臨時採用を利用して教員として活躍する方法もあります。
実は臨時採用は、実際の現場で経験を踏めるため、正規採用されるための大きなアドバンテージに繋がることを始めとして、多くのメリットがあります。今回は、教員の臨時採用の職種の特徴や業務内容メリットを解説します。
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教員の臨時採用で募集される3つの職種の特徴
各地方自治体が年に1回行っている教員採用試験に合格すると、その自治体の正規採用の教員となります。欠員が出たときや教員が不足しているときなど臨時的な措置として通年募集されているのが、教員の臨時採用です。
教員の臨時採用では、以下の3つの職種が募集されています。
- 臨時的任用教職員
- 任期付職員
- 非常勤講師
それぞれの職種の違いを踏まえた特徴や業務内容を解説します。
臨時的任用教職員
臨時的任用教職員とは、以下の理由により正規職員である教員に欠員が生じたときに代替として任用される教員です。
- 妊娠出産休暇の取得
- 育児休業の取得
- 病気休職
正規の教員と同じ業務を担当し、授業だけでなく学級担任や校務分掌も行います。ただし臨時的任用教職員は以下の要件を満たした場合のみの採用で、1年を越えない任期となります。
- 緊急の場合
- 1年以内に欠員が見込まれる場合
- 採用候補者名簿がない場合
臨時的任用教職員として採用される職種は以下の通りです。
- 講師
- 養護教諭
- 実習助手
- 寄宿舎指導員
- 船舶員
- 海技士
- 栄養士
給与は基本給+各種手当が学歴や勤務年数など段階分けされた号数別に支払われます。例として、東京都の臨時的任用教職員の給与モデルを紹介します。東京都の臨時的任用教職員は、1~77号の号数別に、以下の月給や各種手当が合算して支払われます。
- 給料月額
- 教職調整額
- 地域手当
- 義務教育等教員特別手当
- 給料の調整額(該当者のみ)
任期付職員
任期付職員とは、臨時的任用教職員と同じく正規職員である教員に欠員が生じたときに代替として任用される教員です。担当する業務も臨時的任用教職員と同じとなっています。
ただし、臨時的任用教職員の任用期間が1年を越えない範囲であるのに対して、任期付職員の任用期間は1年を超えて3年以内の範囲で任用が可能です。そのため育児休暇など1年を超えての任用が見込まれる場合は、自治体は臨時的任用教職員ではなく任期付職員として採用しなければいけません。
任期付職員として採用される職種は以下の通りです。
- 講師
- 養護教諭
- 実習助手
- 寄宿舎指導員
任期付職員の給与は臨時的任用教職員と同様です。臨時的任用教職員と任期付職員を合わせて「常勤講師」と呼ばれています。
非常勤講師
非常勤講師とは、正規教員と同じ授業での指導を担当する臨時採用教員です。常勤講師と異なり学級担任や校務分掌の業務は担当しません。最長で一会計年度(4月1日から翌年3月31日まで)の期間で任用され、自治体によっては「会計年度任用職員」や「時間講師」とも呼ばれています。
非常勤講師として採用される職種は以下の通りです。
- 講師
- 養護教諭
給与は報酬制で、勤務年数と勤務移管を基に勤務の対価として支払われます。つまり担当した授業数が給与として換算され支払われます。ボーナスなどはありません。
3つの採用形態の比較
臨時採用される教員の3つの採用形態を以下に比較しました。
採用形態 | 業務内容 | 任期 | 待遇 |
臨時的任用教職員 | ・授業での指導 ・学級担任 ・校務分掌 | 1年を超えない範囲 | 給料月額+各種手当など |
任期付職員 | 1年を超えて3年以内 | ||
非常勤講師 | 授業での指導 | 最長で一会計年度 | 経験年数などおよび勤務時間数を元にした勤務の対価として支給 |
臨時採用へ応募するメリット
教員の臨時採用への応募や臨時の教員として働くことでさまざまなメリットが得られます。教員の臨時採用へ応募するメリットを解説します。
教員採用試験よりも簡単に教壇へ立てる
正規採用の教員になるためには各自治体の教員採用試験に合格する必要があります。一方で教員の臨時採用の各職種には採用試験はなく、書類選考や面接が行われるのみです。
限られた任用期間だけでも教員として教壇に立ちたいと思っているときには、正規採用よりも簡単に教員になれるチャンスがあります。
教職経験による特別選考の対象となる場合がある
教員採用試験には、条件を満たすことで筆記試験の一部などが免除となる「特別選考」が設けられています。特別選考のひとつに、今まで教員として所定の勤務経験を持っていると教員採用試験にて優遇措置が受けられる「教職経験による特別選考」があります。
自治体によっては、教職経験による特別選考に臨時採用の教員の職種としての経歴を含んでいるところもあります。教員採用試験に不合格となった場合に、臨時採用に応募し教員としての経歴を積みながら次の教員採用試験への対策をするのも、ひとつの選択肢となるでしょう。
非常勤講師は副業も認められている
臨時的任用教職員および任期付職員の常勤職員は、正規職員と同じくアルバイトなどの副業は禁止されています。一方非常勤講師は地公法第3条第3項第3号で定められた「特別職の非常勤職員」という雇用形態となるため、アルバイトなどの副業が可能です。
非常勤講師は授業数に応じて報酬が支払われるため、長期休暇中は報酬が低くなるなどのデメリットがある一方、学級担任などの業務は行わないためフレキシブルな働き方ができます。塾講師のアルバイトなどを併用しながら、教員採用試験への再チャレンジの勉強時間も確保しやすいでしょう。
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教員の臨時採用への応募から採用までの流れ
教員の臨時採用への応募から採用までの流れを順に解説します。
応募資格を確認する
以下の教員の臨時採用の応募資格を確認しておきましょう。
- 応募する校種や教科に必要な教員免許の所持(見込み含む)
- 地方公務員法第16条の欠格条項に該当しない
- 学校教育法第9条の欠格事由に該当しない
- 民法の一部を改正する法律(平成11年法律第149号)附則第3条第3項の規定により従前の例によることとされる準禁治産者に該当しない
- 同年度・同自治体の臨時採用の候補者選考を一度も受験していない
- 自治体ごとに決められた名簿登載者
登録申し込みをする
教員の臨時採用は各自治体の名簿に登録される必要があります。名簿登録の方法を以下にまとめました。
登録方法の種別 | 登録に必要なこと |
Web登録 | 所定のメールアドレスに必要書類を添付して送信 各自治体の電子申請届出サービスを利用 |
郵送登録 | 必要書類を入手後記入し、所定の郵送先へ送付 |
持参 | 勤務を希望する地域の教育委員会や事務所へ直接書類を提出 |
申込方法は名簿登録を希望する自治体によって異なります。また、登録を希望する校種や職種によって送付先が異なる場合もあるため、申込先をしっかり確認しましょう。
書類審査を行う
送付した書類を基に書類審査が行われます。審査の結果は後日選考結果通知書として送付されます。
名簿登記が行われる
書類審査通過者は名簿登録の基準を満たしたものと認められ、各自治体の採用候補者として名簿に登記されます。
欠員が生じたら面接を受ける
自治体の名簿に登記されるのは、あくまで採用候補者としてです。教員の欠員が生じた場合に学校または教育委員会から連絡が来ます。その後任用予定の学校と面接を行い、教育委員会から任用の可否の連絡が来ます。
なお、名簿登録された教科以外での任用が打診される場合があります。たとえば小学校教員に欠員が生じた場合、小学校教員免許を持っていない中・高の教員免許所持者に小学校の特定教科のみを担当する専任教員としての任用を打診するなどです。
以上の選考に通過すると、所定の任期に常勤講師または非常勤講師として任用されることになります。
教員の臨時採用はとりあえず登録しよう
教員の臨時採用は正規採用よりも不安定で、選考に通過しても必ず採用される確証はないなどのデメリットがある一方、万が一教員採用試験に不合格になった場合の進路として選べるメリットもあります。自分が重視したい教員としての働き方を叶ええるために、臨時採用についてもぜひ検討してみましょう。
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