厚生労働省では離職者訓練や求職者訓練のための「ハロートレーニング」を実施しています。なんとこちら、仕事を探している人を対象にした無料の職業訓練制度で、目指すスキルや資格によってさまざまなコースが用意されています。中には仕事を辞めて職業訓練受験を考えている方もいらっしゃると思いますので、ぜひこの制度をフル活用して頂きたいです。
今回は特に介護職を目指す人のために、職業訓練についての概要や、取得可能な介護職の資格、受講内容、職業訓練を受ける3つのメリットなどについて解説します。
ハローワークの職業訓練は2種類ある
ハローワークでは離職者や求職者のために仕事探しのサポートをしていますが、再就職に有利になる職業訓練も実施しています。雇用保険の受給資格にかかわらず受講できますが、受給の有無によって2種類の職業訓練があります。
公共職業訓練と求職者支援訓練の違い
ハローワークの職業訓練には「公共職業訓練」「求職者支援訓練」の2種類がありますので、それぞれの特徴や違いについて説明します。
訓練の種類 | 適用要件 | 受講者の状況 | 費用 |
公共職業訓練 | 雇用保険を受給している人 | フリーランス、自営業、主婦、就職が決まらないまま卒業した人 | 無料 |
求職者支援訓練 | 雇用保険を受給してない人 | 退職・離職して求職中の人、就職が決まらないまま卒業した人 | 無料+給付金(月10万円) |
どちらの職業訓練も受講料は無料で、テキスト代は実費負担です。
求職者支援訓練における給付金支給の条件
給付金は月額10万円ですが、フリーランスや自営業を廃業した人、雇用保険の受給が終了した人、一定額以下の収入のパートタイムで働いている人などが対象です。その他の詳しい条件は下記のとおりです。
- 収入が月8万円以下
- 世帯収入が月25万円以下(令和5年3月末までは40万円以下の特例)
- 世帯の金融資産が300万円以下
- 現在の居住地以外に土地や建物を所有していない
- すべての訓練日に出席する(やむを得ない理由があっても8割以上出席)
- 世帯に求職者支援制度で訓練を受けている人がいない
- 過去3年以内に特定の給付金を不正支給していない
この7つの条件すべてを満たす人が支給対象です。また、求職者支援訓練の受講者は求職中の人が対象なので、フルタイムで働きながら受講することはできません。
訓練内容ごとに取得できる資格
公共職業訓練と求職者支援訓練の対象者は、基本的にハローワークに通う離職者ですので、働きながら訓練を受けることはできません。
それぞれの受講内容、取得できる介護の資格、訓練期間は以下の通りです。
訓練の種類 | 受講内容 | 取得できる資格 | 訓練期間 |
公共職業訓練 | 介護福祉士の資格取得のための訓練、介護職員初任者研修、実務者研修などの訓練 | 介護福祉士 | 約2年 |
介護福祉士実務者研修 | 約6か月 | ||
介護職員初任者研修 | 約3~4か月 | ||
求職者支援訓練 | 介護職員初任者研修、実務者研修などの訓練 | 介護福祉士実務者研修 | 約6か月 |
介護職員初任者研修 | 約2~3か月 |
介護福祉士は国家資格で、未経験でも最短2年で受験資格が得られます。介護福祉士実務者研修は学科と実技を合わせて450時間のカリキュラム、介護職員初任者研修は130時間のカリキュラムの受講が必要です。
職業訓練の受講から資格取得までの流れ
ハロートレーニング(公共職業訓練と求職者支援訓練)で介護職員初任者研修を受講し、資格を取得するまでのおおまかな流れについて説明します。
受講するまでの流れ
ハローワークでの申込みから、実際に職業訓練で介護について学ぶまでにはステップ1~6までの流れをたどります。
流れ | 各ステップの内容 | 手続きする場所 |
ステップ1 | 求職の申込み・職業相談 | ハローワーク |
ステップ2 | 介護コースを選択して申込書を提出 | ハローワークで受付、職業訓練の実施施設へ提出 |
ステップ3 | 面接・筆記試験などの選考試験を受験 | 職業訓練の実施施設 |
ステップ4 | 就職支援計画書の作成 | ハローワーク |
ステップ5 | 受講のあっせん | ハローワーク |
ステップ6 | 職業訓練を受講 | 職業訓練の実施施設 |
職業訓練にはさまざまな講座があるので、介護資格を目指す人は介護コースを選びます。開講日、募集期間、選考日などはあらかじめ決まっているため、早めに職業相談をしてください。給付金を受給する場合は、事前審査があります。
選考試験に合格するとハローワークから就職支援計画書の交付を受けます。訓練開始日の前日までに計画書を作成してもらう必要があります。
受講しながら求職活動を行う
作成された就職支援計画には求職活動について予め決められており、資格取得までの訓練を受けながら求職活動を行う必要があります。
指定される求職活動は下記のとおりです。
- 職業相談
- セミナーの受講
- 応募求人の選定
- 求人への応募
- 就職面接会への参加
- 連続受講する訓練の選定
- その他
職業訓練で介護を選ぶメリット
職業訓練で介護の資格を取得するメリットについて説明します。一番のメリットはすでにご紹介したように無料で受講できること、給付金が支給されることですが、ここではそれ以外の3つのメリットを取り上げます。
雇用保険受給期間の延長や前倒しが可能
雇用保険の受給期間は基本的に離職日の翌日から1年間で、給付日数は年齢や被保険者期間、退職理由などにより90~360日と決まっています。ただし、職業訓練を利用した場合は給付日数の延長が可能です。
例えば、職業訓練の終了まで200日間必要とする場合、90日間だった給付日数を200日まで伸ばせます。また、通常は給付まで3か月の制限期間がありますが、職業訓練を受けると入校日から受給できるなど、前倒しで雇用保険が受け取れます。
同じ目標を目指す仲間と出会える
職業訓練は学校のようにクラスで授業が行われます。介護資格の取得から就職という同じ目標を持った仲間と出会えるので、お互いに切磋琢磨して授業に取り組むことが可能です。また、就職後も仕事の悩みなどを相談できる関係が築けることでしょう。
就職のサポートがある
介護職が未経験の場合は実務経験不足により不採用になるケースが多いですが、ハローワークの職業訓練を受講すると就職サポートによって就職しやすくなります。
また、就職支援アドバイザーや職業訓練指導員により、履歴書・職務経歴書の書き方や面接の受け方、応募書類の作成などのサポートがあります。実際にハローワークの職業訓練では、受講生の約8割が就職しています。
当ブログでは、職業訓練校を受験するにあたって、試験官に刺さるオリジナリティ溢れる願書を最短3日で作成できる「願書最強ワーク」を取り扱っています。このワークに取り組めば、自分の魅力を簡潔に伝えるポイントが分かるので「職業訓練校受験のために使った後も、転職活動の時にも役立った」と、8割の方がご利用くださっています。最小投資で志望校の傾向に合わせた対策ができる「志望校別・合格レベル問題集」も併せてご活用ください。
職業訓練で介護資格を取得するデメリット
メリットがあればデメリットもあります。職業訓練で介護資格を取るデメリットを3つご紹介しましょう。
資格の取得まで時間がかかる
初任者研修は民間の介護スクールでは最短1か月で取得が可能ですが、職業訓練では2~3か月かかります。民間の介護スクールは申し込めばすぐに受講できるところ、職業訓練では選考試験があり講座の開始時期も決められているため資格取得まで時間がかかります。
選考試験に受からない場合もある
介護資格は人気があるので、選考試験の倍率が高くなることがあります。そのため選考試験に受からない場合も考えられます。
受講スケジュールが限定される
職業訓練の受講はスケジュールが決まっており、基本的に平日の昼間に講座が行われます。やむを得ない理由がある以外は、スケジュールに合わせなくてはなりません。
民間スクールの場合は、通信と通学が併用可能なので、実技以外はオンライン学習ができます。
介護コースの受験対策ポイント
ハローワークの職業訓練は選考試験に合格しなければ受講できません。選考試験は筆記と面接が行われますので、その対策ポイントについて説明します。
筆記試験対策は問題集の選び方
筆記試験は各自治体によって試験内容が異なります。介護コースの場合は多様な受講機会を確保するために、民間教育機関などへの委託訓練がメインです。
対策としては、自分が受講する職業訓練校の出題傾向を押さえておきます。そのために役立つのが、当ブログで取り扱っている、学校別の職業訓練試験問題集です。「職業訓練試験サクセス」には、学校別に出題傾向を合わせた職業訓練校の問題集が用意されています。
筆記試験は、主に国語と数学から出題されます。
筆記試験の教科 | 出題傾向 |
国語 | 簡単な読み書き、四字熟語、文章問題など |
数学 | 計算問題、1次関数など |
筆記試験の難易度はそれほど高くありませんが、範囲が広いので過去問を繰り返し解いて出題傾向を把握し、集中的に勉強したほうが効果的です。
面接試験対策は就職への意欲と熱意
職業訓練の選考試験では筆記試験よりも面接試験が重視されます。各自治体や訓練校によって面接形式は異なりますが、一般的には個人面接で、筆記試験終了後に1人ずつ面接に進みます。
対策としては、面接官がどのような点を確認したいのかを事前に把握しておきます。面接官の確認したいポイントは以下のとおりです。
- 就職に対する意欲と熱意があるか
- 雇用保険や給付金の受給だけが目的でないか
- 資格取得だけが目的でないか
- コミュニケーションができるか
- 訓練を受ける必要性があるか
就職に対する熱意を示すには、選考試験を受ける前に就職活動をしておくと効果的です。実際に就職活動をした経験を踏まえたほうが、意欲や熱意は伝わりやすくなります。
また、面接官から多く聞かれる質問は以下のとおりです。
- 職業訓練の志望動機について
- 就職希望の時期について
- 前職の退職理由について
- 具体的にやりたい仕事内容について
- 訓練期間中は休まずに通えるか
なお、当ブログで扱っている「願書最強ワーク」にて、面接対策も詳しく解説していますので、ぜひご活用ください。
社会人の基本的マナーを身につける
職業訓練は同じクラスで多くの仲間と学ぶ集団生活ですから、基本的なマナーが身についていないとコミュニケーションや受講に影響が出ます。面接試験では、社会人としてのマナーも重視されますので、以下の点に気をつけましょう。
- しっかりと挨拶する
- 大きな声でハキハキと話す
- 相手の目を見て会話する
- 清潔感のある服装にする
職業訓練を活用して介護資格を取ろう
厚生労働省では介護の人材不足を解消するため、職業訓練に力を入れています。受講料は無料ですし、条件によっては給付金の受給も可能です。
介護の資格を取得すれば就職や転職にも困りません。本記事でご紹介している選考試験に合格するための受験対策を参考にしながら、ぜひ職業訓練の介護コースを突破されますことを願います。
職業訓練校を受験することが決まれば、以下の記事で対策を進めましょう。求職者が、受講料無料でさまざまな技能や技術を習得できる職業訓練は、大変注目を集めています。選考試験に合格するために、職業訓練の倍率、試験内容やその難易度、試験対策を解説しています。