新しい業種へ転職するスキルを得たい場合、ハローワークを通じて職業訓練の活用ができますが、採用枠や対象となる学校は限られています。そのため、「職業訓練を受けたいけど、学校が自宅から遠い」などと、通学を諦めようか、お悩みのお電話を近年よく頂きます。
しかしご安心ください。最近ではIT系の授業を中心に、オンラインによる職業訓練が増えてきており、より受講しやすくなってきています。
今回は、オンラインで受講できるコースやカリキュラムについて一例を挙げながら、2つのメリットと3つの注意事項について解説します。
オンラインで職業訓練!
オンラインで職業訓練を受講する形式には、大きく分けて2種類あります。1つはあらかじめ録画されている動画を視聴するeラーニング(オンデマンド)型で、通信の接続環境と端末さえあれば、いつでもどこでも受講できます。
もう1つは、ライブ配信で講師の話を聞いたり、こちらから質問ができたりするという、同時双方向(対面)型です。こちらは受講日時が決まっていますが、わざわざ学校にまで出向く必要がありません。
オンラインによるメリット
オンラインによる職業訓練については、実際に学校に通う形態と比べて大きく2つのメリットがあります。
場所や時間を選ばず受講可能
まずは、場所を選ばずに受講できるという点が大きなメリットです。eラーニング型であればいつでもどこでも受講できますし、対面型もパソコンと通信環境さえあればどこでも受講できます。職業訓練は決まった学校で決まったコースしか受講できません。
そのため、本当に受けたいコースがあっても、近くの学校では開催されていなかったり、学校が遠過ぎて通えないということがあり、その場合は断念せざるを得ません。その点、オンラインであれば全国を対象に募集していることもあり、コース選択の幅が大きく広がります。
何度でも繰り返し聴ける
eラーニングにより決まった動画を視聴する形式の授業については、何度も再生を繰り返して学習することができるのも大きなメリットです。対面授業であれば、途中で質問のタイミングを逃してしまったり、質問しづらい雰囲気であれば、わからないまま授業は進んでいったりしてしまいます。
その点eラーニングであれば、1回聴いただけではよくわからなかった所などは巻き戻すことができます。理解できるまで、講義の内容を確認しましょう。
オンライン職業訓練の内容
では、オンライン職業訓練にはどのようなコースがあり、カリキュラムが用意されているのかを見ていきましょう。
コースの一例
例えば、2022年9月16日に開講したオンラインによる職業訓練(デジタル分野)は、以下のとおりです。
訓練科名 | 訓練期間 | 訓練時間 | 定員 |
サイバーセキュリティマネジメント科 | 2022年9月16日~12月16日 | 9:00~15:50 | 20名 |
Webアプリプログラマー(Java言語)養成科 | 2022年9月16日~12月16日 | 9:00~16:10 | 20名 |
IT人材育成科 | 2022年9月16日~12月16日 | 9:30~16:30 | 20名 |
IT導入リーダー育成科 | 2022年9月16日~12月15日 | 9:30~16:00 | 20名 |
Webデザイナー養成科 | 2022年9月16日~12月16日 | 9:30~16:10 | 20名 |
なお、全国の求職者を対象としたオンラインによる職業訓練は今回初めて実施するものであり、2023年以降の募集については、2022年12月時点では未定とのことです。また、応募者が定員に満たないコースについては、訓練の実施が中止されることもあります。
カリキュラムの一例
職業訓練で受講するカリキュラムについて、ここでは「Webアプリプログラマー(Java言語)養成科」のカリキュラムを一例として挙げます。
学科については、以下のとおりです。
学科の科目 | 訓練時間 |
入所式等 | ー |
就職支援 | 15時間 |
安全衛生 | 3時間 |
システム概論 | 6時間 |
要求分析の知識 | 3時間 |
基本設計の知識 | 3時間 |
詳細設計の知識 | 3時間 |
プログラム概論 | 12時間 |
システムセキュリティ概論 | 6時間 |
合計 | 51時間 |
実技については、以下のとおりです。
実技の科目 | 訓練時間 |
プログラミング演習 | 75時間 |
データベース演習 | 30時間 |
Webアプリ構築演習 | 99時間 |
要求分析演習 | 3時間 |
基本設計演習 | 3時間 |
詳細設計演習 | 3時間 |
開発演習 | 57時間 |
合計 | 270時間 |
時間も十分に取られていて、オンラインであってもカリキュラムは遜色のない内容となっています。
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オンライン受講3つの注意点
オンラインによる職業訓練にはさまざまなメリットがありますが、一方で受講に際しては事前に確認しておきたい点や、注意しておきたい点が3つあります。
通信環境の整備が必要
最も大事なことは、オンラインにより滞りなく受講できるよう通信環境を揃えておく必要があり、基本的には自分で準備しなければなりません。パソコンやカメラ、マイクといった基本的な機器はもちろんのこと、パソコンのスペックやネットワークの通信速度を指定される場合があります。
最近は、インターネットによる情報をスマホで見ることが一般的になり、パソコンに触る人が減ってきていますが、そもそもキーボードやマウスなどの基本的な操作を知っておくことが大前提です。
ここでは一例として、下記に「プログラミングコース(オンライン)」で指定している条件を挙げます。
機器・ソフトウェア | スペック | |
パソコン | ブラウザ | 特に指定なし |
プラグイン | Adobe Explore 11以上 | |
OS | Windows 10 64bit | |
CPU | Core i5 1.5Ghz以上 | |
メモリ | 8GB以上 | |
HDD | 500GB以上 | |
その他 | 内蔵もしくは外付けのWEBカメラ、マイク、スピーカー | |
通信速度 | 常時5Mbps以上 |
最近のパソコンであればスペックに問題はないかと思われますが、かなり以前に購入したものであれば、不足している場合があります。募集している所によってはパソコンやモバイルルーターなどを貸与している場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
受講者は限定
オンライン授業は教室の広さなどは関係なく、理論上何人でも受講可能ではありますが、だからといって定員がないわけではありません。そのため、事前選考で落ちてしまう可能性もあります。
また、オンラインでなければ受講しづらいという要件に該当した方に絞るため、別途、オンライン受講に特化した募集条件が設けられているケースがあります。例えば、育児・介護中の方や居住地域に訓練実施機関がない方、訓練の受講にあたって特に配慮を必要とする方などが挙げられます。
手続きがオンラインで完結できない
3点目は手続きがオンラインで完結できないという点です。受講自体はオンラインで行いますが、選考にあたっての職業相談などは直接、ハローワークに行く必要がある点は通常の職業訓練と同様です。選考面接などはオンラインで受けられることもありますが、注意が必要です。
オンラインでどこでも職業訓練できる!
オンラインに対応した職業訓練のコースはまだまだ少なく、保育士のように体育などの実技が必要な場合は難しいですが、IT系に限らず知識の習得が中心のコースであれば、今後対象範囲が拡大される可能性があります。募集内容も随時変わりますので、ハローワークのサイトなどをチェックしてみてください。
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