「スキルを活かせる仕事で、壮年期を生き生きと働きたい」と考えたとき、やりがいの多い教員の仕事を視野に入れた皆さんに朗報です。40代で教員を目指すとなると「遅すぎるのでは」「そもそも資格を取れるの?」と不安になるかもしれません。しかし、40代という年齢を理由に教員への道が閉ざされることはないため安心してください。
今回は、40代から教員を目指す場合の教員免許取得方法、主な採用ルートを解説します。どのような手段があるのかを理解して計画的に準備をすれば、40代からでも教員を目指すことは決して遅くありません。
40代から教員免許取得・教員採用試験受験はできる?
ここではまず、教員免許と教員採用試験の年齢制限について解説します。
結論、年齢制限はない!
教員免許取得に年齢制限はありません。そのため、40代やそれ以上であっても、そこから勉強をスタートして教員免許を取ることは可能です。ただし、教職課程を履修して教員免許を取得する場合は、取得までに数年の時間を要します。
教員採用試験は年齢制限があるが緩和傾向
都道府県や市町村が実施する公立学校の教員採用試験は、年齢制限を設けている自治体があるため注意が必要です。ただし年齢制限は緩和傾向にあり、制限を撤廃する自治体も増えています。
例えば、令和2年度の教員採用試験では50歳以下の年齢制限を設けていた自治体が26あったのに対し、令和3年度は20の自治体に減っています。また、令和2年度にそれまでの年齢制限を撤廃した自治体も8つありました。こういった年齢制限緩和の大きな背景に教員の不足があります。年齢を問わず教員となる人材が求められている現在は、40代が思い切って教員を目指すのによいタイミングだといえるでしょう。
なお、令和3年度教員採用試験時点で年齢制限を50代以下に設定している自治体は、表のとおりです。
自治体名 | 年齢制限 | 自治体名 | 年齢制限 |
栃木県 | 44歳 | 長崎県 | 49歳 |
東京都 | 39歳 | 熊本県 | 49歳 |
石川県 | 49歳 | 鹿児島県 | 49歳 |
滋賀県 | 49歳 | 沖縄県 | 45歳 |
大阪府 | 45歳 | 名古屋市 | 49歳 |
奈良県 | 39歳 | 京都市 | 49歳 |
山口県 | 49歳 | 大阪市 | 45歳 |
徳島県 | 49歳 | 岡山市 | 44歳 |
香川県 | 49歳 | 豊能地区 | 45歳 |
高知県 | 49歳 |
これらの自治体を受験する場合、 40代からの勉強スタートでは、免許取得時には受験資格を失っている可能性があります。今後、年齢制限の緩和や撤廃が進む可能性はありますが、自分が受験したい自治体の現状は確認しておくことをおすすめします。
40代から勉強して教員免許を取得する方法
教員になるためには、教員免許を取得する必要があります。40代から勉強して教員免許を取得するには、主に次の2つから方法を選択する必要があります。
- 大学・短期大学で教職課程を学び卒業する
- 教職特別課程で学び必要な単位を取得する
社会人として働きながら教員免許の取得を目指す場合は、通信課程を活用するなど両立できるかどうかを重視しましょう。
大学・短期大学で教職課程を学ぶ
最もオーソドックスなのは、大学や短期大学で教職課程を修了する方法です。時間をかけて座学や実習で学ぶことで、しっかりと知識が身につきます。通信制の大学であれば、社会人として働いていても両立を目指せるでしょう。
またすでに大学を卒業している場合は、科目履修生制度を利用して必要な科目の単位のみ取り直せばいい場合もあります。大学・短大などの種類によって取得できる免許状は異なるため、目指す学校の種類や担当教科の免許が取れるかどうか確認して、入る学校を選ぶことが大切です。
教職特別課程で学ぶ
教職特別課程とは、教職や特別支援教育に関する単位の修得を目的に大学が設ける課程です。教職特別課程で学ぶことにより1年間で教職に関する単位を取得でき、通常よりも短期間で教員免許が取得できるでしょう。その代わり、カリキュラムの密度が濃く、スケジュールは厳しいと考えておく必要があります。
なお教職特別課程では、幼稚園教諭・小学校教諭の免許は取得できません。さらに教職特別課程を開講している大学は、非常に少ないのが現状です。
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教員の採用ルートは学校や免許の種類で違う
教員として採用される方法は、1つではありません。採用されたい校種や免許の種類、社会人経験の有無、持っている専門知識やスキルなどによって、いくつかの選択肢があります。主な採用ルートは次の4つです。
- 教員採用試験
- 私立学校の採用試験
- 講師登録
- 教育職員検定
どのルートで教育を目指すかによって採用スケジュールなどが異なります。はじめにどのルートを目指すかイメージしたうえで、対策や計画をたてる必要があります。
公立学校の教員を目指す場合:教員採用試験を受ける
公立学校の教員になるには、自治体が実施する教員採用試験に合格する必要があります。スケジュールや出題内容は自治体ごとに異なりますが、表のようなパターンが一般的です。
試験の種類 | 試験日程 | 主な実施内容 |
一次試験 | 6~7月ごろ | ・教養試験(筆記試験) |
二次試験 | 8~9月ごろ | ・人物試験(面接試験、論作文) ・実技試験 ・適性検査 |
教員採用試験に合格すると採用候補者名簿に登録されます。その後面接が行われ、3月半ばごろまでには赴任する学校が決まる流れです。
なお教員採用試験には、社会人経験がある人などを対象とした社会人特別選考枠が設けられていることがあります。多様な経験や専門知識を持つ人の採用を目的としており、教養試験の免除など一般枠とは異なる試験内容である場合が多いです。40代以降の受験であれば、社会人時代の豊富な経験を活かして社会人特別選考枠での受験を視野に入れてもいいでしょう。
私立学校の教員を目指す場合:学校ごとの採用試験を受ける
私立学校の場合は、一般企業と同じように各学校ごとに独自で採用試験が実施されます。なかには、各自治体の私学協会などが実施する「私立学校教員適性検査」を、採用に利用している学校もあります。募集時期や試験の実施時期、応募資格などが学校によって異なるため、自分で小まめに採用情報をチェックしておくことが大切です。
また、私立学校の場合は毎年募集をかけない学校が多く、募集がかかったとしても採用人数が少ないのが一般的です。「この学校で教えたい」という希望があっても、タイミングよく募集があるとは限らないことは頭に置いておく必要があります。
講師として働きたい場合:自治体に講師登録する
多くの自治体で、講師として働くことを希望する人の登録を募集しています。講師とは、公立学校の教員に欠員が生じたときに期限を設けて採用される教員です。講師登録をしておくと、登録した条件に合致する欠員が出た場合に声がかかり、面接のうえで問題がなければ講師として採用されます。
講師登録ができるのは、原則として自治体が募集する校種・教科の教員免許を持っている人です。ただし、自治体によっては、塾講師など教育関係職の経験があることなどを条件に、教員免許取得見込みの段階から講師登録できる場合もあります。
専門知識を活かしたい:教育職員検定を受けて採用される
教育職員検定とは、教員免許を持たないもののすぐれた知識や経験を持つ社会人などを教員として採用するために授与される「特別免許状」を取得するための検定です。教育職員検定を通過すると、次の特別免許状を取得したうえで教諭として教職に就くことができます。
- 小・中・高校の全教科 ※小学校の免許も教科ごとに授与されます。
- 特別支援学校の自立教科など
教育職員検定を受けて採用に至るまでの流れは、おおよそ以下のとおりです。
- 採用を希望する学校・教育委員会に経験、スキル、専門知識などを踏まえて相談する
- 教育委員会、学校法人、校長などにより推薦書が発行される
- 教育委員会や学校法人の理事長、校長などが都道府県教育委員会に出願する
- 都道府県教育委員会により教育職員検定が実施される
- 合格すると特別免許状が授与され採用となる
特別免許状は、効果的な教育の実施に必要と認められる場合に特別に授与されるものであるため、検定を受けるには学校などの推薦が必要です。推薦を受けるために自ら相談する必要がありますが、スキルを認められれば費用や時間をかけずに教員としての採用に直結する可能性があります。
また、特別免許状を取得して教員として採用されたあと「教員経験3年以上」「必要な単位数の修得」の量条件を満たすと、同じ校種の普通免許状を取得可能です。
40代からの教員は社会人経験を活かすのがポイント
教員になることは40代からでも十分に挑戦可能です。特に、社会人としての経験を積んでいる点が40代の強みです。社会人特別選考枠や教育職員検定など社会人として培った知識やスキルを活かせる制度の利用も検討しましょう。
教員採用試験の受験を決めたら、まず思い浮かぶハードルは筆記試験ですよね。以下の記事で、社会人が筆記試験を突破する対策方法を解説していますので、ぜひご覧ください。