「教員採用試験は難しい」と聞いて不安になっている人もいるでしょう。実際に取り組んでみて、挫折を感じている受験生からも毎年必ずお問合せいただきます。
しかし現在、採用倍率は低下傾向にあり、教員採用試験は合格のチャンスしかありません。大切なのは、教員採用試験の難しさや出題傾向と対策のポイントを理解して、万全の準備をして本番に挑むことです。
そこで今回は、みんなが教員採用試験が難しいと感じる理由や数字から見た現状、一般的な出題内容と対策のポイントを解説します。
教員採用試験が難しいといわれる理由とは?
教員採用試験は、出題内容が公務員試験として特別に高難度というわけではありません。それなのになぜ教員採用試験が難しいといわれることが多いのか、理由は主に次の3つです。
- スケジュール的に併願が難しい
- 受験者のレベルが高い
- 暗記型対策だけでは対応できない
教員採用試験は、近隣地区の日程が重複することが一般的です。そのため併願や本命受験前の予行練習と滑り止めを兼ねたお試し受験が難しく、1年に1度きりのチャレンジになります。ミスが命取りとなるこのようなスケジュールの仕組みが、合格のハードルを上げる要因の1つです。
また、教員採用試験の受験者は新卒よりも既卒者のほうが多いことから、繰り返し挑戦して対策をブラッシュアップしている人も多数いることが予想されます。併願ができないために受験者の大半が「本命」であることもあり、ライバルのレベルは高くなる傾向にあると考えてよいでしょう。
試験内容について最近では面接のウエイトが大きくなり、知識を暗記するだけでは合格しづらくなっています。また、面接の内容も回答に対してさらに踏み込んだ質問をされる傾向があり、対策の難易度は上がっているといえます。
教員採用試験に受かる難易度
実際に教員採用試験に受かるのはどれくらい難しいのでしょうか。ここでは、受験倍率や教員採用者の中に社会人経験者がどれくらいいるのかなど、具体的な数字をもとに、教員採用試験の難易度をイメージしてみましょう。
教員採用試験の採用倍率は低下傾向
文部科学省が公開している「令和4年度公立学校教員採用選考試験の実施状況」によると、令和4年度および過去5年間の教員採用試験の競争率(採用倍率)は表のとおりです。
学校区分 | 年度ごとの競争率 | ||||
平成30年 | 令和元年 | 令和2 | 令和3 | 令和4 | |
小学校 | 3.2倍 | 2.8倍 | 2.7倍 | 2.6倍 | 2.5倍 |
中学校 | 6.8倍 | 5.7倍 | 5.1倍 | 4.4倍 | 4.7倍 |
高等学校 | 7.7倍 | 6.9倍 | 6.1倍 | 6.6倍 | 5.4倍 |
特別支援学校 | 3.5倍 | 3.2倍 | 3.1倍 | 3.1倍 | 2.8倍 |
どの学校区分でも競争率は低下傾向にあり、5年前と比べると大きく下がっていることがわかります。また、20年以上さかのぼれば競争率が10倍を超える学校区分、年度も珍しくありません。
競争率の面から見ると現在の教員採用試験の難易度は、以前と比べて下がっているといっていいでしょう。
既卒者の採用率は新卒者より低い
「令和4年度公立学校教員採用選考試験の実施状況」によると、令和4年度の採用者数に占める新卒者・既卒者の人数と採用率は、それぞれ表のようになっています。
学校区分 | 小学校 | 中学校 | 高等学校 | 特別支援学校 | ||
受験者の区分 | 新卒 | 人数 | 8,189人 | 3,536人 | 1,374人 | 835人 |
採用率 | 46.8% | 23.5% | 19.3% | 50.6% | ||
既卒 | 人数 | 7,963人 | 5,604人 | 3,105人 | 2,228人 | |
採用率 | 34.4% | 20.4% | 18.4% | 32.4% |
採用者に占める民間企業等勤務経験者は数%でしかない
「令和4年度公立学校教員採用選考試験の実施状況」によると、令和4年度の教員採用試験による採用者のうち、民間企業等勤務経験者の人数と割合は表のとおりです。
学校区分 | 民間企業等勤務経験者数 | 民間企業等勤務経験者の割合 |
小学校 | 426人 | 2.6% |
中学校 | 301人 | 3.3% |
高等学校 | 283人 | 6.3% |
特別支援学校 | 158人 | 5.2% |
どの学校区分でも民間企業等勤務経験者の割合は1割に満たず、社会人からの教員採用は少数であることがわかります。しかし近年は、社会人特別採用枠が設けられるなど、社会に出て多様な経験を積んだ教員の需要が高まっている状況です。
今後、民間企業等勤務経験者の採用割合が増えていき、教員採用試験の社会人受験が有利になることが期待されます。
教員採用試験の一般的な内容
教員採用試験の詳細な出題内容は自治体により異なりますが、出題パターンはおおよそ共通しています。一般的には1次試験と2次試験に分けて実施され、主に表のような試験が行われます。
試験の種類 | 試験内容 |
1次試験 | ・筆記試験(教職教養・一般教養・専門教養) |
2次試験 | ・人物試験(面接・論作文・集団討論・模擬授業など) ・実技試験 ・適性検査 |
ただし、表のパターンに当てはまらない自治体もみられ、1次試験から人物試験を課すケースや3次試験まであるケースなどもあります。受験する自治体が例年どのようなパターンで試験を実施しているのか、過去年度の募集要項などをチェックするといいでしょう。
以下で、それぞれの試験の内容をくわしく解説します。
筆記試験(教養試験)
筆記試験は一般教養、教職教養、専門教養次の3つに大きく分かれます。それぞれの出題内容や難易度などの特徴は、表のとおりです。
教養試験の種類 | 出題内容の特徴 |
一般教養 | 主に学校で習う教科の基礎知識を問う試験です。人文科学、社会科学、自然科学から幅広く出題されるほか、時事問題や地域にまつわる問題が出題されるケースもあります。 |
教職教養 | 教員に必要な教育に関する知識を問う試験です。教育原理、教育心理、教育法規、教育史の4分野から出題され、分野にまたがる問題もあります。また文部科学省、中央教育審議会の答申や通知に関する出題も多く見られます。 |
専門教養 | 専門教科に関する知識を問う試験です。出題範囲は当該教科全般にわたり、難易度の目安は大学共通試験や大学教養課程の基礎程度です。ただし、自治体によっては、難関大学入試程度の難易度の問題が出題されることもあります。また指導方法について問われるケースもあります。 |
人物試験(面接・論作文など)
人物試験は、受験者の教員としての適正の見極めを主な目的とした試験です。実施内容は自治体によりさまざまですが、面接や論作文の形式がよくみられます。人物試験の主な出題内容と特徴は、表のとおりです。
教養試験の種類 | 出題内容の特徴 |
面接 | 個人面接、集団面接などの形式があります。多くは面接官の質問に答える方法で実施され、自己PR、志望動機、教職教養、時事などに関する質問がなされます。回答内容のほか、印象、挙動など人物の全体を評価する試験です。 |
論作文 | 学校教育に関する指定テーマについて、受験者の考えを記述する試験です。文字数や出題形式は自治体によって幅があり、資料の読解を求める出題例もあります。記述内容の論理性や表現力に加えて、教職への熱意や適正も判断されます。 |
実技試験・適性検査
実技試験が実施されるのは、体育、音楽、技術、家庭、美術、英語などの教科です。指定された課題について、基準を満たす技術・技能があるかどうかを判定します。
適性検査は、受験者の性格や特性を判定するための検査です。配点があるわけではなく、結果は人物評価の資料として用いられます。
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教員採用試験を突破するための対策ポイント
難しいといわれる教員採用試験ですが、必要以上に不安にならないでください。要点を押さえた対策をしっかり行えば、合格に必要な知識はちゃんと身に付きます。主なポイントは次の3つです。
- 過去問を分析する
- 受験する自治体の教育方針を確認する
- 人物試験対策を怠らない
以下でそれぞれ解説します。
1. 過去問を分析する
筆記試験対策では、過去問の分析が有効です。自治体ごとに出題の傾向があるため、過去問をチェックして頻出分野などを分析します。分析結果をもとに重点的に対策する範囲を絞れば、効率的な試験対策が打てるでしょう。
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2. 受験する自治体の教育方針を確認する
各自治体は、教員採用試験で自治体の教育方針を理解し、共感して職務にあたってくれる人材を採用したいと考えています。そのため、各自治体の教育方針を確認し、筆記試験や面接、論作文で問われたときに答えられるように理解を深めておきましょう。自治体ごとの教育方針は、ホームページで確認できます。
3. 人物試験対策を怠らない
近年、教員採用試験において、人物重視の傾向が高まっています。中には、1次試験の点数を2次試験に持ち越さず、2次試験の点数だけで合否を決める自治体も多くあります。そのため、2次試験対策をおろそかにしてしまっては、教員採用試験の突破は難しいでしょう。
受験する自治体の過去の試験内容などをチェックして、模擬面接や論作文の添削など実践的な対策を十分に打つことが重要です。また自治体によっては、人物評価の判定基準が公開されているため、事前に確認しましょう。
教員採用試験の「難しい」は取り払える!
教員採用試験は、併願が難しいことや暗記型の対策だけでは乗り切れないことなどから「難しい」といわれます。しかし採用倍率が右肩下がりの傾向であるという点では、合格のハードルは高くないでしょう。
大切なのは試験の内容を理解し、適切な対策をしっかりと打ったうえで試験に臨むことです。ポイントを押さえた対策で実力をつけて、合格への道を開きましょう。
筆記試験についてもう少し詳しく知りたい!という方は下の記事をぜひご覧ください。社会人が筆記試験を突破する対策方法を徹底解説しています。